成功するには楽観主義か悲観主義か?ポジティブ思考VSネガティブ思考の結論【心理学】

心理学の分野では、「楽観主義(ポジティブ思考)」か「悲観主義(ネガティブ思考)」のどちらが成功しやすいか? というのが人気のテーマらしい。

結論から先に言うと、どちらが良いかはケースバイケースで、成功のためには「楽観主義」と「悲観主義」の両方が必要だ。必ずしも「ポジティブ思考をしよう!」というわけでもないのだ。

「どのような状況のときにどちらのマインドがいいのか?」という心理学による結論を頭に入れておくと、活かせる状況は多いかもしれない。

この記事の内容は、エリック・バーカー『残酷すぎる成功法則』第3章「 勝者は決して諦めず、切り替えの早い者は勝てないのか?」第5章「「できる」と自信を持つのには効果がある?」や、ハイディ・グラント・ハルバーソン『やってのける 意志力を使わずに自分を動かす』の楽観主義と悲観主義の記述などを参考にしてまとめている。

「楽観主義」と「悲観主義」の使い分けは、知っていて損はない内容なので、興味があるなら読んでいってほしい。

楽観主義のメリット

楽観主義には、良い面がたくさんある。

過酷な状況を乗り越えようとするときに、粘り強さをもたらしてくれるのは、ポジティブな考えのようだ。

調査によると、「良い営業マン」かどうかの決め手は、「人と接するのが得意」とか「外向的な性格」であることよりも、「楽観主義であるかどうか」のファクターが大きいらしい。営業などの多くの仕事で、楽観的に考えることは、良い効果を及ぼし、成果を出しやすくする。

楽観主義は、幸福感やチャレンジ精神をも高める。成功を思い描くことができれば、幸福を感じやすく、様々なことに挑戦しやすくなる。

ポジティブな思い込みは、それだけでも良い効果を発揮する場合がある。楽観視と自信のフィードバックは、自信があるから成果が出て、それがまた自信を強化するという、成功の循環を形成する。

  • 粘り強さ
  • ストレス軽減
  • 幸福感
  • チャレンジ精神
  • ポジティブの循環

などの面で、楽観主義にはメリットが多い。

とはいえ、楽観主義にもデメリットはある。

 

楽観主義のデメリット

ポジティブ思考は、壊滅的な失敗を招きやすい。多くの大失敗の事例を検証すると、過度な楽観視が原因である場合が多い。

人は多かれ少なかれ、自分にとって都合の良いように世界を見ているが、ポジティブなフィードバックが循環し、自己肯定の連鎖状態にいると、その自信過剰が傲慢さと妄想に繋がり、やがて大失敗を招く。

楽観主義は「傲慢さ」に転化しやすく、気づかないうちに現実が見えなくなってしまう。

つまり、楽観視は、新しいことに挑戦したり、苦しい状況で踏ん張るときには有効だが、何かをコツコツ改善したり、堅実なことをしっかりこなすのには、あまり向いていない。

また、楽観視は、それ自体に報酬があることにも注意しなければならない。人間は、常に将来の自分を過大評価しているものなのだが、未来の自分を思い描いただけで、何か達成した気分になって、報酬を先取りしてしまうのだ。

楽観主義には、

  • 傲慢さや妄想につながる
  • 重要な危機を見逃しやすい
  • こつこつ改善することが難しい
  • 妄想するだけで満足してしまう

などのデメリットがある。

楽観主義的なマインドは、良くも悪くも、現実が見えていない。だからこそ様々なことにチャレンジできるし、土壇場の底力も発揮できるのだが、安定感がなく、堅実な作業をしっかりこなすのには不向きだ。

楽観主義に偏りすぎている人は、「悲観主義」の利点に目を向けるべきだろう。

 

悲観主義のメリット

悲観主義は、悪いイメージがあるが、実は、「決められたことをきちんとやる」「コツコツ改善していく」というタイプの仕事において、非常に有効なマインドだ。

楽観主義と悲観主義では、悲観主義のほうが、現実を正確に把握している場合が多い。「現実」と「自分の現状」とのギャップを正確に認識することは、傲慢になることを防ぎ、気を引き締め、ミスを防ぎ、着実に改善していくことができる。特に、試験勉強や定型的な作業など、やるべきことがしっかり決まっている場合、楽観主義よりも悲観主義のほうが

  • 現実を正確に把握しやすい
  • ミスを防ぎやすい
  • コツコツと改善していきやすい
  • 決まった目標を確実にこなすのが得意

などが悲観主義のメリットになる。

だが、悲観主義にはデメリットもある。

 

悲観主義のデメリット

「抑うつリアリズム」という理論がある。実は、気分が落ち込む「うつ症状」の人のほうが、健康な人よりも正確に世界を認識しているというものだ。これは、「自分を過大評価して、様々なことを楽観視しているのが、人間にとって正常なこと」と言い換えることもできるだろう。

悲観的(現実的)に物事を見すぎた場合、しばしば現状を打開する能力が失われてしまう。

「パブロフの犬」という有名な実験がある。犬に電気ショック(苦痛)を与える実験なのだが、電気ショックの前には音が鳴り、犬は低い壁を飛び越えてさえすれば電気ショックが流れないエリアに行くことができる。ちょっとした仕組みを理解しさえすれば、電気ショックを避けるのは簡単なことなのだが、犬たちは「電気ショックの前になる音」という単純な仕組みを見逃し、「何をやっても電気ショックからは避けられない」と学習して、苦痛を耐え続けてしまう。

悲観的になるほど行動力がなくなり、行動しないから悲観的になるという循環にハマると、いわゆる「学習性無気力」という状態になって、何もできずにただ苦しみに耐える状況から抜け出せなくなる。

また、悲観的に考える時間が多いと、幸福度が低くなりやすいという調査結果も多い。

  • 幸福感を感じにくい(うつ病)
  • 行動力がなくなる(学習性無気力)
  • 悲壮感を感じやすい

というのが悲観主義のデメリットであり、過度な悲観主義は危険が伴う。

「自分が何の行動も起こせていない」のであれば、無根拠でもいいから楽観視を取り戻そうとするべきかもしれない。(というより、そもそも楽観主義は無根拠なものなのだ。)

 

「ダニング=クルーガー効果」の検討

「ダニング=クルーガー効果」を知っているだろうか? 経験が浅い人ほど、それがどれくらい難しいのかを評価することができないので、かえって自信満々でいられるような現象のことを言う。世の中の多くのことは、簡単そうに見えて難しいのだけど、技量の低い人ほど実際よりも簡単だと思う傾向がるのだ。

この「ダニング=クルーガー効果」は、「謙虚になろう」という文脈で持ち出されることが多いが、この作用はむしろ、自分のことをポジティブに考えたり、何かにチャレンジするために必要な作用とも言えるだろう。「自分でもできそう」という思い上がりがあるからこそ、人間は「学習性無気力のループ」にハマらずに、日々を暮らすことができるのだ。

「世の中の様々なものが、見た目以上に難しい」と考えている人は、たしかに現実を正確に把握しているかもしれない。しかし、そのような正確さこそが、うつ病や学習性無気力に繋がりやすことに注意すべきだろう。むしろ、「これくらいのことは自分でもできそう」という感覚がない場合は、それはそれで危険信号だ。

勉強熱心なゆえに悲観的な思いにとらわれがちな人は、「あえて無根拠な自信を持ち、楽観的に考える」ようにしたほうがいいかもしれない。

 

楽観主義と悲観主義の使い分け

ここまで述べてきたことまとめると以下のようになる。

楽観主義 悲観主義
メリット 粘り強さ、幸福感、チャレンジ精神 正確な認識、ミスの少なさ、着実な改善
デメリット 傲慢、重大なミス、妄想 うつ病、学習性無気力、悲壮感

楽観主義か悲観主義かは、性格的な側面もあるものの、自分自身への語りかけによって、コントロールすることも可能という。つまり、つとめて楽観的に考えようとしたり、悲観的に考えようとすることは、効果があるのだ。

では、楽観と悲観をどうやって使い分ければいいかだが、「短期目標は楽観主義、長期目標は悲観主義」というのが、わかりやすく有効だ。

何らかの試合やテストがあるとして、当日や直前は「楽観主義」で、当日までに自由な時間がたくさんあるほど「悲観主義」というのが、成果を出しやすいマインドセットになる。

試験まで時間があるときに「楽観的」になり、当日に近づくほど「悲観的」になるというのは、よくありがちな心理だが、理想的なのはその逆だ。

現時点で苦しいとき、踏ん張らなければならないときは「楽観主義」が有効で、遠い目標があって、そこに向かって着実に歩みを進めていかなければならないときは、「悲観主義」が有効になる。

以上のような使い分けを知っておけば、漠然と楽観的になったり悲観的になったりしているよりも、成果を出しやすくなるかもしれない。

 

エリック・バーカー『残酷すぎる成功法則』の要約と解説

 

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