「外向性」と「内向性」は、「楽観的か悲観的か?」と並んで、心理学では非常に注目度の高いテーマだ。
「外向的な人間と内向的な人間では、どちらが成功しやすいのか?」は、多くの人が気になるトピックだろう。
結論から言うと、「外向的な人は平均的に成功しやすく、大成功した人には内向的な人が多い」。
この話題は、自分が外向的であろうと内向的であろうと、踏まえておいて損はない内容だと思うので、詳しく述べていきたい。
なおこの記事は、エリック・バーカー『残酷すぎる成功法則』第4章「なぜ「ネットワーキング」はうまくいかないのか」を主に参考にしている。

外向的な人の強みは?
まず、「お金(収入)」に関して言えば、「外向的な人間のほうが、平均的に稼ぎやすい」といういくつもの調査結果があるようだ。
また、外向性は、収入のみならず、「昇進」や「仕事の満足度」にもプラスの影響を与える。
多くの人は、リーダーとは外向的なものだと考えているが、この認識は「自己充実的予言」になる。外向的なほうがリーダとして適正があると判断されやすく、結果的にそれは現実のものになる。「集団の中で最初に口を開き、積極的に話すという外向的な行動を取るだけで、リーダーとして見られる」という調査結果もあるようだ。リーダーになりたいなら、有能であるかどうかよりも、外向的に見られるかどうかのほうが重要になる。
知り合いの多さは、たとえそれが表面的な付き合いでさえ、重要な情報を手に入れやすくしてくれるし、失業や大きな失敗などに対するリスクヘッジになる。
さらに、外向性は幸福度の高さとも比例する。
こうして見ると、外向性には非常にメリットが多いように見える。だが、「外向性は個人的な熟練度と負の相関にある」という調査結果がある。つまり、トップクラスの成果は、外交的でない(内向的である)人のほうが出しやすいのだ。
内向的な人の強みは?
トップクラスの成果を出すのは、内向的な人が多い。「平均的には成功しにくいが、大成功する可能性がある」のが「内向型人間」だ。
調査によると、重要な発見をした多くの科学者は、非常に内向的なふるまいをしていた。
トップアスリートは、約10人中9人が、自分のことを内向的だと認識していた。一見は外向的に見えるスポーツ選手でさえ、トップまで上り詰める人は、内向的な性格の人が多い。
学校で優秀な成績を収める者や、突出して博学になる者を予測するには、IQ(知能の高さ)よりも、「内向的かどうか?」のほうが、有効な判断材料になるらしい。
成績と性格の関連を調査すると、外向的な人よりも内向的な人のほうが、圧倒的に成績が良くなりやすい。
また、リーダーになるタイプは外向的な人のほうが多いものの、目的意識の強い人を率いる場合は、内向的なリーダーのほうが尊敬され、よいパフォーマンスを引き出しやすい場合が多い。「外向的なリーダー」は、指示待ちの従業員を率いるときに本領を発揮しやすいのに対して、「内向的なリーダー」は、目的意識のある従業員を率いるときに本領を発揮しやすい。
外向性と内向性の強みはトレードオフになりやすい
外向性の強みと内向性の強みの両方を活かせれば、もちろん良いのだが、ふたつはトレードオフの関係にある。
友人や恋人の最も重要な条件は、「近くにいること(時間をかけること)」だそうだ。「遠くの親戚より近くの他人」ということわざもあるが、かまってくれない魅力的な人よりも、それほど魅力的でなくとも、長い時間を共有した人のほうが、友情や愛情を感じやすいのだ。つまり、「友達を作ったり恋人を作るということは、自分の訓練に充てられたはずの時間を他人に注ぎ込む(外交性と内向性は両立しにくい)」ということに、どうしてもなってしまいやすい。
また、人間は一般的に、能力の高さには親しみを感じにくく、有能さより優しさのほうを好みたがる。突出した能力は「近づきがたさ」を生み出してしまう。
内向的な人は、自分のための訓練を行いやすいが、それは友人や恋人に見放されやすい原因になる。
外向的な人は、ネットワークを活用しやすく何かと助けてもらいやすいが、知り合いの多さは注意散漫の原因となり、自分の訓練のための時間をどうしても削がれてしまう。
外向性のメリットと内向性のメリットは、両立しにくいのだ。
自分の特性と反対のものをあえて重視してみる
- 外向性は、平均的に成功しやすいが、トップクラスにはなりにくい
- 内向性は、平均的に成功しにくいが、トップクラスを生み出しやすい
というのが結論だ。そして、ふたつの性質は、互いにトレードオフの関係にある。
もっとも、外向的か内向的かというのも、あくまで人間の一部分に着目した傾向であって、当然ながら、外向的だからといってトップになれないわけではなく、内向的だからといって一般的な成功や幸福に手が届かないわけではない。例外はいくらでも見つかるだろう。
これらの特徴に一喜一憂するのではなく、あくまで「意識しておけば有利になるかもしれない」くらいに捉えておきたい。
なお、この話の要点は、あえて自分の性質と反対のことを意識すると、成功への道筋を開きやすくなることにある。
つまり、自分が「外向的or内向的」だからといって、自分と正反対のタイプを拒否したりバカにしたりするのではなく、それぞれの合理的な部分を取り入れようとするのが良い。
- 外向的な人は、雑音が入らず訓練できる時間を意識的に確保することで、自分の幅が広がり、内向的な人からも敬意や親しみを持たれやすくなる
- 外向的な人は、あえて積極的にコミュニティに顔を出してみることで、新しい人脈や機会が手に入り、自分の能力を発揮しやすくなる
基本的には自分の性格に沿った活動をしながらも、その反対の部分を少し意識してみることが、成功に繋がる。

コメントを残す