公認会計士はどんな職業?企業の監査って何?わかりやすく解説

「公認会計士」は、3大国家資格(公認会計士、弁護士、医師)のひとつ、あるいは3大国家試験(公認会計士試験、弁護士試験、国家1類)のひとつとして数えられたりと、ステータスの高い職業として知られているが、具体的にどのような仕事をしているのかちゃんと知っている人は少ないかもしれない。

公認会計士は、その名の通り「会計」のプロフェッショナルだ。ではなぜ、社会は「会計のプロ」という職業を必要とするのだろうか?

公認会計士ってどんな職業?

という質問に対しては、ほとんどの場合

上場企業の監査を行う

という解答が返ってくる。だが、「そもそも監査って何?」「なんで監査が必要なの?」という疑問を抱く人も多いと思う。

この記事は、表面的な解説ではなく、公認会計士はどのような仕事で、どのような役割を果たしているのかという根本的なところを、誰にでもわかりやすく解説することを目的としている。

 

公認会計士は何をする仕事?上場企業の監査が必要な理由

「監査(かんさ)」とは、「監督」+「審査」みたいなニュアンスの言葉で、企業の会計が正しく行われているかチェックすることを言う。

株式を発行して資金調達をしたすべての「上場企業」は、自社の財務状況を誰にでも見られるように公開する義務を負っている。この前提は、株にあまり関わらない人にとっては理解しづらい点かもしれない。

企業は「株式」を発行し、投資家に株を買ってもらうことで、事業のための資金調達をする。その代わり、株式を発行した企業は、「決算」を誰もが見られるように公開する義務を負う。「株式市場から金を集めたのなら、財務状況は常に公開していなさいよ」ということだ。これを一般的に「財務会計」と言う。

私たちは、すべての上場企業の「決算報告書」を自由に見ることができる。

上場企業のサイトには、「IR(Investor Relations)」という項目があって、そこから「決算報告書」をダウンロードすることができる。

上場企業であれば、「(企業名 ) 決算報告書」などと検索することでも見つけられるだろう。

これは上場企業の義務なので、「決算書の公開」は絶対に守らなければならないルールだ。なお、上場していなければ、大企業であっても決算を報告する義務はない。

上場企業は決算を公開する「財務会計」の義務があるが、一方で「会計」はごまかしをしやすい。実は儲かっていないのに、自社の株価が下がるのが嫌だから、儲かっているという嘘の決算書を出そうとする企業もいる。これを「粉飾決算」と言う。

「公認会計士」は、企業が正しく会計を行っているかを指導し、最終チェックする役割を担う職業だ。これを「監査」と言う。

上場企業の「監査」は、「公認会計士にしかできない独占業務」だ。公認会計士は、会計に対する深い知識を持ち、大企業が正しく「財務報告」をしているのかチェックするプロフェッショナルなのだ。

  • 上場した企業は、株式を公開して資金調達できる代わりに、決算を報告し続ける義務を負う
  • 会計をチェックする役割がなければ、粉飾決算などがやりたい放題になる
  • 上場企業が正しく会計を行っているかを「監査」する役割のプロフェッショナルが「公認会計士」である

 

日本で公認会計士になるためには?

日本では公認会計士になるためには、「公認会計士試験」に合格する必要がある。

「短答式試験」として

  • 会社法
  • 管理会計論
  • 監査論
  • 財務会計論

「論文式試験」として

  • 財務会計論(簿記・財務諸表論)
  • 管理会計論
  • 監査論
  • 企業法租税法

に加えて、

  • 「経営学、経済学、民法、統計学」のうちから1つを選択する

現在、「公認会計士試験」は、司法試験や医師国家試験などと比べて「受験資格」が一切必要なく、実力のみで受かることのできる試験だ。大卒資格なども必要ないので、最年少合格者は16歳で試験に合格している。

試験に合格しさえすればすぐに「公認会計士」になれるわけではなく、2年間の実務経験と3年間の実務補修を経たのちに、正式に「公認会計士」と名乗ることができるようになる。

だが、実務経験は「監査法人」に入って積むことができるし、給料や社会的な地位も非常に高い仕事なので、一般的に公認会計士は「取得するメリットの多い難関資格」と言うことができるだろう。

合格するための勉強時間の目安として、「最低でも3,000時間は必要」と言われている。

 

「公認会計士」と「税理士」の違いは?

「税理士」も、会計を扱う仕事だが、多くの人にとって身近なのは税理士のほうだろう。

税理士は、個人事業主や非上場企業の申告書を作成することはできるが、上場企業の「監査」を行うことはできない。

一方で、「公認会計士」は、上場企業の監査という独占業務を与えられている上に、公認会計士の資格があれば「税理士」として登録し、税理士の業務をすることが可能だ。

「税理士」は「公認会計士」の業務ができないが、「公認会計士」は「税理士」の業務をできる。その意味では、あくまで資格の価値のみで判断するならばだが、「公認会計士」は「税理士」の上位互換とも言える。純粋な試験の難易度は「公認会計士」のほうが高い。

ただ、上場企業の監査と、それ以外の個人や法人の税務の手助けは、性質の違う事業であり、公認会計士だからといって税理士の事業がうまくできるとは限らない。

実態のところ、公認会計士よりも稼ぐ税理士は数多くいる。それでも一般的には、税理士は数が多くて過当競争であり、公認会計士は「監査」という独占業務を与えられているので、公認会計士のほうが給料や待遇は良い傾向にあるようだ。

 

企業の財務ってそんなに難しいものなの?公認会計士の役割について

  • 会計ってそんなに勉強する必要があるくらい難しいものなの?
  • ちゃんと決められたルールに従ってやればいいだけなのでは?
  • 会計の作業ってこれからAIなどで自動化されていくんじゃないの?

という疑問もあるだろう。

「公認会計士」という職業が存在する以前から、「政府の徴税官が帳簿をチェックする」ということは行われていた。しかし、事業が大規模で複雑になるほど、正しく経理をすることが難しくなり、政府の抱える人材だけでは手に負えないものになっていったので、「会計士」というプロに頼る必要が出てきたのだ。

もともと「会計士」は、株式会社がうまくいかなくなったあとの破産処理をする職業だった。やがて経理が難解なものになっていくと、存続している会社の「監査(正しく経理が行われているかのチェック)」という仕事が、会計士に任せられるようになったのだ。

実は、政府に独占業務を認められる「公認会計士」の誕生は、鉄道事業がきっかけだった。鉄道という事業は、路線や電車や駅など巨大な固定資産を抱え込むが、それを経理上どうやって処理するかはかなり難しいものになる。そこで「公認会計士」というプロフェッショナルが必要とされたのだ。

公認会計士は、

  • 企業側にとっては「難解な経理を正しく行う手助けをしてくれる」
  • 政府側にとっては「企業が不正会計をしていないかチェックしてくれる」

という、企業と政府の間に立つ公平なレフェリーの役割を期待されている。

企業の監査が公認会計士の「独占業務」であることからも、公益性を強く期待される職業である。

とはいえ、公認会計士は完全に「政府」側の「公務員」というわけではない。これは弁護士や医師が「独占業務」を授けられながらも「公務員」ではないのと同じで、あくまで民間ではあるが、「公益性の高いプロフェッショナル」であることを期待される業務なのだ。

近年は、「会計の作業はAIによって自動化される」という風潮がある。たしかに、個人の確定申告や、中小企業の財務などに関するツールが普及し、食い扶持を奪われるのではないかと恐れる税理士は多い。しかし、大企業になるほど、「経理」はそれほど簡単に自動化できるものではない。

実は会計は、多くの人が想像しているほど機械的、客観的に定まるものではなく、様々な「解釈」が入り込む余地がある。そのため、公認会計士には、慣例を理解する業務経験や、監査する側の倫理観を持ちながらも企業側の立場にも寄り添う高度なコミュニケーション能力が求められる。

定型的な会計業務がツールによって自動化されていくことはこれから起こりうるだろうが、それによって公認会計士の仕事が奪われるとは考えにくい。

一方で、話題になっている新技術の中でも、トレーサビリティのある「ブロックチェーン」などは、会計責任や財務とも関連の深いイノベーションを起こす可能性があり、会計士だからといって技術に無関心で良いということにはならないだろう。

 

公認会計士はどれくらい重要な仕事?

上の説明を読んでも、「公認会計士」という職業の重要さがまだピンとこないかもしれない。

だが、株式市場は「信用」を前提に成り立っていて、それが崩壊すると社会的な大混乱が起こる。その過去の事例は、1929年の株価大暴落から始まったとされている「世界恐慌」だ。

1929年にニューヨーク証券市場が大暴落したあと、恐慌は長く続き、ニューヨーク証券市場に上場していた企業の時価総額は、1933年までに89%も失われたと言われている。アメリカのGDPは30%落ち、失業率は25%に達した。大恐慌はアメリカのみならず世界中に波及した。深刻な経済危機を打破するために各国が「ブロック経済」を始め、第二次世界対戦の遠因になったとも言われている。

過去に起こった株式市場の崩壊は、それくらいヤバい結果をもたらしたのだ。

大恐慌以前のアメリカでは、すでに「公認会計士」という職業はあったものの、経済の発展スピードに対してルールの整備や倫理観が追いついていなかったらしい。

正しい監査が行われない場合、政府がまともに税金を課すことができないという問題に加えて、株式市場が「推測」に基づいた不安定なものになってしまうという大問題がある。

株式投資は、企業の決算状況に基づいて行うというのが前提だが、公開される企業の決算が信用できないものになると、「推測」による投資が行われるようになる。監査が機能していなければ、企業は粉飾決算を行うし、利益が出ていると思われた企業が、実はまったくの赤字だったということも起こりうるのだ。

「世界恐慌」のときは、決算情報がまともに見られない状況が続き、やがて「大暴落」が起きた。株式市場の公開性に対する信頼がなくなってしまうと、企業は資金調達ができなくなり、大規模で長期的な不況に陥ってしまった。

「世界恐慌」のあと、その反省を活かすため「証券取引委員会」が設置されたりなどして、企業の財務報告と会計士の監査のルールはかなり厳しいものになった。

公認会計士は「市場の万人」と呼ばれることもあるが、会計士が正しく「監査」をしなければ、投資市場は成り立たないのだ。

現在も、企業の「粉飾決算」が大きなニュースになることもあるが、粉飾というのは一企業だけの問題ではなく、株式市場全体の信頼に関わる問題だ。決算をごまかすという「ズル」がまかり通れば、その「場」である証券市場全体の信頼の低下に繋がり、不信の連鎖は大規模な恐慌や長期に渡る不況に繋がりかねない。

大規模な上場企業ほど、株式で資金を調達している場合が多く、株式市場は実質的に「私たちの経済活動」のことなので、「公認会計士」が社会に果たしている役割は非常に大きなものだ。

公認会計士は、医師のように直接命に関わったり、弁護士のように直接刑罰に関わったりはしないので、直感的に重要性が理解されにくい傾向があるものの、弁護士や医師と同様に、社会的責任が重く、高い倫理性が求められる職業と言える。

 

会計士がコンサルティングをするのは正しいか?悪徳会計士の存在

公認会計士は、独占業務を認められる代わりに、プロフェッショナルとしての高い倫理性が求められる。

では、「悪徳弁護士や悪徳医師がいるように、悪徳会計士はいるのか?」という問いに対しては、「いる」という回答になるだろう。

これはアメリカで顕著に起こったことだが、会計士同士の競争が激しくなると、会計士は単なる「監査」に留まらず、企業に対しての「コンサルティング業務」で利益を上げるようになった。大手の会計事務所は、会計に詳しいプロフェッショナルを多く抱えているし、その知見を活かせば、企業に対して有益なアドバイスをすることができる。

しかし、

  • 企業の会計がきちんとなされているかチェックする「監査」
  • 企業の経営に対しての指針を提供する「コンサルティング」

のふたつは、倫理的に両立させて良いものなのだろうか?

複雑な会計ほど「解釈」が入り込む余地があるからこそ、専門知識とプロとしての倫理観を兼ね備えた「公認会計士」という職業が必要とされた。公認会計士は「企業」と「政府」の間に立ち、公平な調整をする役割を期待されているのだ。そのような会計士が「コンサルティング」を請け負うのであれば、企業の側に肩入れしすぎることになってしまわないだろうか?

実際に、高いコンサルティング料をもらう会計事務所が、積極的に企業の不正会計に手を貸していたという事例がある。

中でも大きな事件が、2001年に起こった「エンロンショック」だ。アメリカの大手会計事務所「アーサー・アンダーセン」が、アメリカの大企業の「エンロン社」の不正会計に手を貸していて、結果的に大規模な企業破綻に繋がり、世界の株式市場にも大きな影響を与えた。

エンロンは粉飾決算で株価を押し上げていたのだが、会計事務所であるアーサー・アンダーセンは、エンロンから莫大なコンサルティング料をもらっていて、実質的に不正会計に手を貸していた。事件が明るみになったあと、アーサー・アンダーセンは解散を迫られた。

エンロンショックのあとの2002年に「上場企業会計改革および投資家保護法(SOX法)」が成立するなど、会計ルールは、大きな事件が起こるたびに見直される傾向がある。

会計士の「責任のあり方」に関する議論は、現在進行系で行われている最中とも言える。

現在は、「監査とコンサルティングの独立性」といった原則が守られるようになり、公認会計士は、同一企業の監査業務とコンサルティング業務を同時に行うことを禁止されている。だが、会計事務所のコンサルティング業務が完全に禁止されているわけではない。

日本では「アドバイザリー業務」とも言われているが、公認会計士がその専門知識を活かして、企業経営にアドバイスをするということは今も行われている。

これに関しては、これからどうなっていくかはわからない。また何か大きな問題が起これば、監査法人のアドバイザリー業務にさらなる制限が加わる可能性もないとは言えない。

ちなみに、「監査業務」は公認会計士の独占業務だが、「コンサルティング」は特にそうではない。しかし、大手の監査法人は専門知識を持った優秀な人材が多いので、高い見識を求められるコンサルティング業務をやりたがるのも、倫理的かどうかは別として、特別おかしなことではないかもしれない。

しかし、「コンサルティングを称した監査法人と企業との癒着」は、株価市場全体の信頼を揺るがす大問題に発展しかねないので、厳しい世間の目に晒されていることも事実だ。

 

 

以上で、「公認会計士」という職業の意義や特徴や経緯について、なんとなく理解してもらえたのではないかと思う。

歴史や経緯についてより詳しく知りたいのであれば、田中靖浩『会計の世界史』やジェイコブ・ソール『帳簿の世界史』といった書籍がおすすめだ。

田中靖浩『会計の世界史』の要約と解説【1/3】第1部 簿記と会社の誕生 ジェイコブ・ソール『帳簿の世界史』の要約と解説【1/3】

 

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