哲学のおすすめ入門書・哲学史本を紹介【解説・概説】

哲学を学びたい人のために、おすすめの「哲学」本を紹介する。

当サイトは、経済、政治、社会といったテーマを主に扱っているが、そのような社会科学のベースには「哲学」がある。知的好奇心のある人が「哲学」に興味を持つのは当然のことだし、実際に哲学を学ぶことで得られるものは多い。

すでに読みたい本や気になる哲学者がいるなら、その著作や哲学者ごとの解説書を見るのがいいが、そのような気になる哲学者ができる以前に「哲学を学びたい」というのであれば、入門書や概説書が頼りになる。

「哲学(とくに西洋哲学)」は、積み上げが重視されるので、「哲学史本」が実質的に入門書の役割を果たす。

概念や理論をいきなり学ぼうとするよりも、まずは時系列で概説を紹介するタイプの哲学史本を読むのがいい。

入門書・哲学史本を読む中で、気になる哲学者が見つかるだろうから、その著作に手を出してみる、という形で勉強を進めていくことができる。

当記事では、哲学の入門書・解説書としておすすめしたい書籍を厳選して選んだ。

最初に紹介するものほど初学者向けなので、よければ参考にしていってほしい。

 

飲茶『史上最強の哲学入門』

初心者向けのわかりやすい哲学本を数多く出版している「飲茶」氏の書籍の中でも、もっとも人気の高いものであろうと思われる『史上最強の哲学入門』。

漫画『グラップラー刃牙』のパロディで、「真理」を巡ってそれぞれの説を主張する形で哲学者たちが紹介される。

丁寧かつ勢いのある筆致で進んでいき、普段から読書をあまりしない人でも最後まで読んでしまえそうな哲学本だ。元ネタの漫画を知らなくても問題なく読めるだろう。

間違っていたり、表面的すぎると感じる部分はないが、流れと勢いを重視しているので、個々の哲学者の解説は少し物足りなく思えてしまう。だが、「ここまで哲学を読みやすくできるのか」という衝撃を受けるほどのテンポの良さで、ベストセラーになったのも納得だ。

「哲学入門書」の中では最も簡単に読める一冊だと思う。これ以上簡単にしてしまうと、哲学本としてあまり意味がないだろう。

哲学を初めて学ぶ人の入門書としておすすめできる。

 

苫野一徳『はじめての哲学的思考 』

哲学教育に関心のある著者が、「哲学的に考える」ことを初学者に教えようとする内容。

著者の苫野一徳氏は、竹田青嗣氏の影響を強く受けているように見えるが、本書は中高生でも読めるくらい、かなり配慮されて書かれている。

子供騙しではない、本質的な内容を扱っているが、やや素直すぎる(批判・検証があまり意識されていない)のではないかと感じる部分もなくはない。

とはいえ、現実的な問題に活かしやすい形で哲学を提示している、優れた入門書ではある。

頭の良い人が書いた解説書は世の中にたくさんあるが、初学者のことをしっかり考えて書かれた本は貴重で、本書はその貴重な一冊と言えるだろう。

 

田中正人、斎藤哲也『哲学用語図鑑』

哲学用語を、「ビジュアル化」して説明した「哲学用語図鑑」。

哲学をそれなりに学んだ人ほど、本書のような試みを否定したくなるかもしれない。

哲学はある程度テキストを読み込まなければ身につかない部分があり、簡易的な図解によって「わかった気になる」のは避けるべきことだからだ。

だが、初学者にとっては、ワードや概念を知っていて、それが全体としてどう位置づけられているのかを何となく把握していることで、後の学習も進めやすくなる。

本書をパラパラとめくって、哲学者の名前や用語に馴染んでおくだけでも、哲学を学びやすくなるだろう。

本書は、一覧性が高く、ビジュアル化の良い部分が発揮されている。

批判的に読みたい人は、本書と照らし合わせて、自分だったらどのような図解を描くのかを考えてみるのもいいかもしれない。

本書だけで理解した気になるのは避けたいが、とても良くできている図鑑なのでおすすめしたい。

 

竹田青嗣、西研『はじめての哲学史―強く深く考えるために』

有斐閣から出ている、竹田青嗣、西研の編集による、哲学初学者のためのテクスト。

1998年の出版だが、今なお「哲学の入門書としての哲学史本」として強くおすすめできる。

竹田青嗣氏や西研氏の著者は批判されることも多いが、哲学を学びたい初学者にとって本書が優れた内容であることは否定しようがないだろう。

哲学史における重要な哲学者とその思想を紹介していくが、解説書にありがちな無味乾燥さとは無縁で、哲学への情熱が伝わってくる一冊。

 

木田元『反哲学史』

木田元は、翻訳の他にも、いくつもの哲学解説書を出している日本の哲学者だが、中でも本書『反哲学史』はかなり出来が良いと思っている。

「反哲学」とあるが、既存の哲学に対する「反(アンチ・テーゼ)」を生み出しながら発展していったのが哲学なので、『反哲学史』というタイトルになっている。実質的には王道の哲学史本である。

「ソクラテス以前の哲学」の記述が全体の流れの中に組み込まれていて、非常に得るものの多い内容。

数ある哲学史本の中でも、特におすすめしたい一冊。

 

今道友信『西洋哲学史』

1987年の出版で、哲学史本として高い評価を得ている。

出版された年代のわりには難解さがなく、平易な言葉で非常によくまとめられている。もちろん、扱っている内容自体は難しいので、何度か読み返して咀嚼する必要があるかもしれない。

他の哲学史本と比較して、中世の記述がしっかりされている。

哲学において、中世ヨーロッパは「暗黒の時代」と呼ばれていて、通史本や概説書では軽く触れられるだけの場合が多いのだが、本書はそれなりの分量で中世哲学について書いていて、内容も素晴らしい。興味があるなら読んで損はない一冊。

 

貫成人『図説・標準 哲学史』

とても良くできた図解で、辞書、索引のようにして使うことができる。

年代や地図など、直感的に把握しやすい工夫がされていて、ここで紹介する哲学史本を読むときなども、脇に置いておくと捗る一冊。

図解や資料集にありがちな表面的なものではなく、感心するくらいうまくまとめられている。

本書単独でというよりは、副読本としておすすめしたい。

 

貫成人『哲学マップ』

上で紹介した「図説」の作者でもある貫成人氏の著作。

哲学の潮流をマッピングするという発想の哲学史本で、「哲学の全体像」を見渡すことが意図されている。

発想と工夫が面白く、哲学をそれなりに勉強している人が読んでも新たな視野が得られるだろう。

哲学の入門・解説書として非常におすすめしたいが、新著としては内容がやや難しめなので、他の哲学史本を読破した後に読むといいかもしれない。

 

熊野純彦『西洋哲学史』

岩波新書2冊ぶんの「西洋哲学史」。

入門書としての配慮はあるが、硬さもある哲学史本で、新書ながらもそれなりに難しい内容。

詩的なセンスのある文章は、合う人と合わない人がいそうだ。

関連年表、人名検索、邦語文献一覧が載せてあり、索引性が意識されているのは素晴らしい。

初学者向けとは言えないかもしれないが、哲学をしっかり学びたい人におすすめしたい。

 

岩内章太郎『新しい哲学の教科書 現代実在論入門』

哲学の入門書・概説書のほとんどは、古代ギリシャから近代までに多くの比重を割く。一方で本書は、「現代実在論」という「今流行っている哲学」の概説本だ。

哲学史についてそれなりにしっかり学んでいる人でも聞き慣れないであろう、「今活躍している哲学者」が紹介&解説される。

初学者への配慮がある文章で、読みやすく、哲学に興味のある人の期待に応える内容になっていると思う。

まだ評価が定まらない分野ではあるかもしれないが、少しでも関心があるなら読んで損はない。

 

竹田青嗣『哲学とは何か』

竹田青嗣氏によって、2020年に書かれた哲学の解説書。

著者の集大成となる『欲望論』を執筆した後で、いま一度「哲学」をまとめてみようとする内容で、何十年も哲学の解説書を出し続けてきた著者の最新作だけあって、説明が洗練されているようにも思える。

近年話題になっている、メイヤスー、マルクス・ガブリエルにも言及があるが、壮大な哲学史を見渡し、そのコンセプトを抽出しようと試みる。

独自のやり方で「哲学」をまとめているが、読みやすく、力強く、情熱を感じる筆致。

「哲学を学ぶモチベーション」を与えてくれる内容になっていて、「哲学の入門書」としても悪いものではないように思える。

 

伊藤邦武、山内志朗、中島隆博、納富信留『世界哲学史』

「ちくま新書」の哲学解説系は、どれも一定の質が担保されていて、哲学を学ぶ人の心強い味方と言える。

2020年から出版が始まった、ちくま新書の「世界哲学史シリーズ」は、「西洋哲学=哲学」から脱却し、アジアやアフリカにも共通する「哲学」を探る、「世界哲学史」のためのビッグプロジェクトだ。

101名の日本の哲学研究者が集結する、気合いの入った試みとなっている。

納富信留による「序章 世界哲学史に向けて」を引用したい。

世界哲学史はどのような方法で遂行されるのか。たんに様々な地域や時代や伝統ごとの思索を並べても、それは「阿呆の画廊」(ヘーゲル)の羅列展示に過ぎない。(略)人類の哲学営為を全体として捉えようとする世界哲学史は、どんな方法を取るべきかの問いにおいて、それ自体がきわめてチャレンジングな哲学的課題なのである。
ここではまず、異なる伝統や思想を一つ一つ丁寧に見ていくことが基本となる。そして、それらに共通する問題意識や思考の枠組み、応答の提案などを取り出して比較しながら、歴史の文脈で検討することになる。従来の比較思想とやや異なる点があるとすると、二者か三者の間で行われる比較検討ではなく、最終的には世界という全体の文脈において比較し、共通性や独自性を確認していく仕方であろう。

引用文にあるように、数多くの研究者が、「世界哲学」を意識しながら、自身の専門分野について述べていく形式をとる。

実際に6巻まで読んでみたところ、玉石混淆という印象も受けたが、全体として質は高く、勉強になった。今後何度か読み返すであろう文章にも多く出会えた。

中央公論新社の「哲学の歴史シリーズ」などと比較しても、価格が安く、文章の量も現実的に読み切りやすいものとなっている。

  • ちくま新書のクオリティの高さ
  • 世界哲学という壮大な問題意識
  • 数多くの一流の学者が専門分野の概説を述べていく贅沢さ
  • 内容の豪華さに対する価格の安さ
  • 新書で全8巻という現実的な文量

など、おすすめできる要素が多い。

気になる方はチェックしてみてほしい。

 

 

哲学を学ぶためのおすすめ本の紹介は以上。

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