社会学のおすすめ本・入門書を紹介

社会学を学びたい人のために、おすすめの「社会学」本を紹介する。

社会学は、「社会」といった捉えどころのないものをいかにして学問するか、という方法論や概念を発展させてきた。例えば、世の中で「学問」という営みが成り立つ前提を明らかにしようとするのも、社会学の範囲だ。

他の学問をやっている人でも、社会学の基礎を学ぶことで、より広い視野が得られるだろう。

社会学が批判されがちな理由として、単なる素人の感想程度のものに「社会学」として学術的な権威が付与される、という現象がある。そのような状況をどう考えればいいのかということもまた、社会学が扱おうとする問題なのである。

社会学は、具体的な社会の現象を扱おうとするものでもあるが、「社会学はどのような方法か?」という理論的な積み上げがあり、それを学ぶための優れた書籍も多くある。

この記事では、社会学の理論や概念をしっかりと学べる、おすすめの入門書・解説書を紹介する。

 

奥村隆『社会学の歴史I–社会という謎の系譜』

大学生向けに書かれた社会学入門で、「社会学に興味があるけど、前提知識は何もない」という人向け。

社会学の体系を俯瞰するには、まずは時系列順に、社会学の発展を追うのがオーソドックスな学び方と言える。

本書は、有斐閣の教科書的な社会学の入門書の中でも、比較的やさしい内容なので、自信のない初学者に向いている。

『社会学の歴史Ⅰ』とあるが、『Ⅱ』が出ているわけでもないので、まずはこれを一冊読んでみるのが良い。

平易な説明が心がけられているが、決して内容が薄いわけではなく、しっかり学べる入門書だ。

 

那須寿『クロニクル社会学―人と理論の魅力を語る』

社会実在論、社会唯名論、相互作用論などの分類の上で、時系列に沿って理論社会学の発展を追う。

1997年と出版年度は古いが、理論社会学の入門書・教科書として評価が確立されている一冊。

今なお、オーソドックスに社会学を学びたいと考えるすべての人におすすめできる良書だ。

複数の著者による共著で、重要な社会学者を1人1章ずつ解説していく。

教科書として使えることが意図された硬い内容でありながら、非常に面白く読める。理論社会学の魅力が詰まった一冊である。

 

長谷川公一 、浜日出夫、藤村正之、町村敬志『社会学 新版(New Liberal Arts Selection)』

網羅性の高い「社会学」の入門・概説書。

社会学の主要な関心領域を一望できるテキスト集で、「社会学」という分野がどのような問題を解決しようとしてきたのかがわかる。

第1部は「行為と共同性」、第2部は「時間・空間・近代」、第3部は「差異と構造化」という形でまとめられている。

一冊を通した体系性がそれほど意識されているわけではないが、本書を通しで読むことで、「社会学」の全体像がなんとなく掴めるようになるだろう。

2007年に出版された本だが、2019年に『新版』が出て、「東日本大震災」や「グローバル化」などが意識された改訂になった。

分厚い本で、価格もそれなりにするが、「社会学」を真剣に学ぼうとする人にはおすすめできる。

 

友枝敏雄、浜日出夫、山田真茂留『社会学の力 — 最重要概念・命題集』

有斐閣が出している、非常に力の入った社会学の解説・概説書。

数多くの社会学者の寄稿によって成り立っていながら、現実的な問題よりも「理論」を重視するものが多い。

全70にも及ぶ社会学の概念が紹介されていて、「概念の博物館」のような印象を受ける。これほどの内容が一冊にまとまっていて、比較的手軽な価格で買えるのはすごいことだ。

ただ、玉石混淆とまでは言わずとも、執筆者が多いからか、文章の力量にばらつきがあるように思う。

また、情報量が多く、勉強になるという意味では間違いなく優れた本だが、他の社会学本のような「面白み」を感じにくい形式ではあるかもしれない。

執筆者が多く、文章が細切れになっているので、本のタイトルにもあるように、「読み物」というよりは「概念・命題集」という感じだ。

 

田中正人、香月孝史『社会学用語図鑑』

ビジュアル化に力を入れた、社会学の用語図鑑。

上で紹介した本よりはだいぶポップでライトだが、一覧性が高く、用語や概念をとりあえず予習しておく上では有用な内容になっている。

他の図説などと比べて、単純に「年表」ひとつをとっても、とても見やすく、デザイン性の高さがページを開くときの心地よさに繋がっている。

この図鑑だけでは説明しきれていないと感じる用語もあるが、「このような概念がある」と知っているだけでも、社会学はだいぶ学びやすくなるだろう。

一般向けに書かれているが、本書によって、社会学がより多くの人にとって身近なものになるかもしれない。

 

竹内洋『社会学の名著30』

ちくま新書の「名著30シリーズ」の「社会学」版。

「命題集」や「図鑑」と比べて、一冊一冊についてそれなりの文量を割いて説明がされている。

文献ガイド・索引として使うのもいいが、頭から順番に読んでいくのがおすすめだ。

全体を通して、内容の堅実さよりも、「社会学の面白さ」にフォーカスして書かれているように思える。

実際に、どの紹介も面白く、社会学に適正のある人であればあっという間に読めてしまうだろう。

手軽に社会学の流れがなんとなく掴めるし、興味を惹かれる社会学者や文献との出会いも期待できる。安定の文献案内と言える。

 

見田宗介『社会学入門』

「真木悠介」という名前でも活躍し、数々の名著を残してきた日本の社会学者「見田宗介」による、一般向けの社会学入門。

教科書的というよりは、著者独自の問題意識と、著者の考える社会学が解説されているが、それゆえにわかりやすい。著者の熱い思いが伝わってくるし、良い意味で社会学の自由さを感じる。

オーソドックスな入門書とは言えないまでも、社会学に興味のある初学者の期待に応える内容にはなっているだろう。

 

ピーター・バーガー『社会学への招待』

オーストラリア出身で、アメリカに移住した社会学ピーター・バーカーによる、比較的やさしい社会学の入門書。

原著が刊行されたのは1963年だが、世界的な社会学の入門書となっている。年代の古い訳書ではあるが、内容自体は読みやすい。

多くの人が縛られている「常識」や「思い込み」から自由になれる方法的な枠組みを提示してくれるのが社会学であり、そのような「社会学の面白さ」に目を輝かせる著者の筆致が魅力的。

ユーモアのある文章で、夢中になって読み進めてしまうような面白さがある。

有斐閣の教科書な入門書に重苦しさを感じてしまう人には、特にこちらをおすすめしたい。

 

ライト・ミルズ『社会学的想像力』

アメリカの社会学者ライト・ミルズによって、1959年に出版された社会学の古典。

当時主流だったアメリカ社会学の方法に否定的な内容で、「社会学は何をするべきか?」について論じている。社会学は「方法」それ自体が議論になる学問なのだ。

本書を批判的に読み込むことが、社会学的に考えるための訓練になる。重要な社会学の古典と位置づけられる名著だが、初学者向けかどうかは議論が別れるだろう。

「社会学」というより、より広く「社会科学」に携わる者であれば読んでおきたい本とされている。気になったのであればチェックしてみてほしい。

堅苦しそうな本に見えるが、学問や方法論に少しでも興味のあるなら、普通に面白く読めると思うのでおすすめ。

 

ランドル・コリンズ『脱常識の社会学』

アメリカの社会学者ランドル・コリンズによって、1982年に原著が出された本で、個人的には社会学の入門書の中でも一押し。

「社会学」の方法を使って、合理性、神、権力、犯罪、愛など、社会を構成する重要な「常識」を分析していく。その手腕が見事で、ワクワクするような知的興奮がある。

よく「常識を疑え」なんてことが言われたりするが、「常識を疑う方法」を発展させてきたのが社会学だ。

著者独自の咀嚼の仕方で物事を説明していて、知的強度は高いものの、社会学自体の前提知識は必須としない。そのため、普通に面白く読める、良質な入門書になっている。

「多くの人が素朴に納得してしまうような合理的な説明」や「その社会で当然とされている常識的な価値観」の疑い方が示され、ものごとを普通とは違う角度で見られるようになった感覚を味わえるのが社会学の醍醐味かもしれない。

 

 

「社会学」を学ぶためのおすすめ本の紹介は以上。

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