日本企業の強みは「技術力」ではなく「現場力」【技術大国はウソ?】

かつては、「日本は技術大国である」というイメージが強かったようだ。

今でも「日本の技術はすごい!」と考えている日本人はそれなりにいる。

しかし、現役で働く日本の労働者の多くは、もはや日本は技術において、大きく遅れている国だと考えているだろう。

この記事では

  • そもそも「日本は技術力の国」というのがウソだったのではないか?
  • むしろ、日本の強みは「現場力」と言ったほうが適切なのではないか?

という話をしたい。

「日本企業の本当の強みとは何か?」を解説していくので、興味のある方は読んでいってほしい。

「技術大国」という神話が終わった

今の日本で働く労働者の多くが、「日本は技術大国」という神話が過去のものだと思っているだろう。

そのシンプルな理由は、日本企業が「技術」に対応できていないからだ。

企業の上層部が、プログラミングやテクノロジーをあまり理解しておらず、未だに「ハンコ」や「ファックス」といったローテクが健在であるほど、日本は技術に遅れている国だからだ。

ただ、日本の工業製品は世界で認められているし、「トヨタ」や「ソニー」を始め、まだまだ世界的に活躍している企業もある。

ここでは、日本の工業力の要因として、「技術」に強いからなく、「現場」が強いからだったのではないか、ということを論じたい。

 

トヨタの「カイゼン」とは?

実は日本は、構造的に「技術」を活かしにくい労働システムの国だ。一方で、日本の強みは「現場」にある。

ここでは、時価総額で日本のトップ企業であり、「日本の技術力」の象徴でもある「トヨタ」を例に出したい。

トヨタで有名な「改善(カイゼン)」という概念は、「kaizen」という言葉のまま、世界に普及しているそうだ。

トヨタは「カイゼン」を、会社経営の根幹に据えている。

「カイゼン」を簡単に説明すると、現場からのボトムアップ方式で、「改善」できる要素を探し、それが「企画・設計」にも反映される仕組みを成り立たせることだ。

車の組み立てなどにおいて、「現場だからわかること」が存在し、そのような現場ならではの知見を掬い上げて、全体を「改善」していけることが、日本企業の強みとされている。

トヨタのような「カイゼン」が成り立つためには、「現場」にいる社員が、「設計」や「販売」などの視点を持っている必要がある。

日本型雇用は、様々な部署を移動させながら社員を成長させていくシステムだ。全体の工程や、どんな製品が消費者に受け入れられやすいかなど、本来であれば「設計」や「企画」や「販売」レベルの仕事内容を、「現場」レベルの人が意識するからこそ、「カイゼン」が成り立つ。

多くの仕事は、「上は設計する」「下は言われた通りに組み立てる」というトップダウンの役割分担が固定化されやすい。

一方、トヨタを始めとする日本企業の多くは、上下の役割分担が曖昧で、「下」に位置する「現場」の社員が、「上」の視点で「カイゼン」を考えるところに特徴がある。

 

個々の社員の職務範囲を明確に定めず、配置転換を定期的に行う「日本企業」の強みは、受動的に上の指示に従うのではなく、「現場」の視点から改善点を探り出していく、ボトムアップにある。

 

日本が「技術」を受け入れられない構造的な理由

「技術」という言葉は、幅広い射程を含むものだが、ここでは誤解を避けるために、「技術=新しいテクノロジー」と定義させてもらいたい。

日本型雇用は、構造的に、「技術」を活かしにくいシステムになっている。なぜなら、「役割分担」が明確でないがゆえに、「専門性」が評価されにくいからだ。

「日本型雇用」そのものについて詳しくは、当サイトで解説している記事がいくつもある。

ちゃんとした内容が知りたいなら上の記事をチェックしてほしいが、当記事の文脈で言えば、「日本は分業が曖昧だからボトムアップで、欧米は分業が明確だからトップダウン」なのである。

そして、分業が明確な欧米のほうが、新しいテクノロジー(専門的な技術)を組み込みやすい。

欧米の雇用システムは、「企画・設計する人」「手続きを進める人」「現場で作業する人」の役割分担がしっかりしている。

なぜ日本の管理職は無能なのか?女性比率が低い理由や欧米との違いを解説」という記事で特に詳しく説明したが、実は欧米は、多く日本人が考えている以上に「上の言うことを下が素直に従うトップダウンの社会」なのだ。分業が明確なゆえに、トップダウンのピラミッド構造が強固になりやすい。

欧米では、管理職なら管理職、技術職なら技術職と、各々の「専門性」の枠組みが重視されるし、キャリア評価においても「専門性」が見られる。だからこそ、必要な技術があったときに、その専門分野に詳しい人と契約を結んでプロジェクトに組み込む働き方をしやすい。

一方で、日本は、「様々な職場を経験した社員が年功制で昇進していく」というキャリアシステムなので、構造上、専門性を育てにくいし、専門性のある人材をうまく取り込みにくい。

ただ、日本は、「専門性と相性が悪い」という欠点がある反面、「現場のモチベーションが高い」という利点がある。現場レベルの仕事を行う人が、受動的にならず、様々な配置転換を繰り返しながら出世していく仕組みがあることで、「現場」の知見を全体に活かすことができる。

欧米は、専門性がある一方で、階層が固定化されやすく、現場のモチベーションが低い。欧米の場合は、リーダーの意思決定こそが重要で、「末端は指示された通りに働くだけ」という部分がある。

だから、「現場」で比較したとき、日本人の労働者は「指示された以上の働きをしようとする」ので、欧米人からは驚かれることが多い。ただこれは、組み合わせの違いなのだ。

  • 日本は、「責任を負うリーダーと、能動的な現場」のセット
  • 欧米は、「専門性のあるリーダーと、受動的な現場」のセット

日本の場合、「現場が主役」であり、年功序列で管理職になった上司にもそこまでの裁量はなく、「主体的に働く現場のまとめ役」という責任を負うポジションに就くことが多い。

なぜ日本の管理職は無能なのか?女性比率が低い理由や欧米との違いを解説」の記事で述べたように、日本と欧米とでは「管理職」の概念が違うのだ。

欧米の場合は、現場は指示されたようにしか動かないので、リーダーの意思決定が何より重要になるし、「管理職」こそが最も重要な役割を果たすものと見なされる。

  • 日本は、「現場」が主役のボトムアップ
  • 欧米は、「意思決定」が主役のトップダウン

 

構造的に、日本は「現場」が主役で、だからこそ、専門性の高いテクノロジーを活かしにくいシステムになっている。

日本が評価される文脈での「技術力」という言葉は、「製品の品質が高い」みたい意味合いで使われることが多いが、これは、「日本がテクノロジーを活かせる」からではなく、「現場の創意工夫が反映されている」ゆえのものだった可能性が高い。

 

「現場」こそが日本企業の武器だった

「日本の製品」や「日本のサービス業」など、メイド・イン・ジャパンの魅力とされることが多いのは

  • ユーザー目線が行き届いている品質
  • サービス業のホスピタリティの高さ
  • きっちりと仕事をこなす責任感と信頼性

などが挙げられる。

これらは、「現場重視」の働き方の反映と見ると、整理がつきやすいかもしれない。

日本は基本的に、現場のモラルとモチベーションの高さを前提に、「ボトムアップ」を重視してきた国なのだ。

例えば、世界にも認められる日本のコンテンツとして「漫画」が挙げられるが、これも典型的なボトムアップシステムで、個人の創作である漫画を、→アニメ化→グッズ化→ゲーム化→映画化と、小規模なものから大規模なものへとメディアミックスしていく産業形態になっている。

一方で、中央集権国家のイメージが強い日本だが、実は「分業」が明確ではないがゆえに、トップダウンの仕組みを活かすことができない場合が多い。なまじ「現場」が受動的でないがゆえに、「戦略」や「計画」が苦手なのだ。

「高度な専門性」や「大きな投資」が必要なジャンルにおいて、人口ボーナスによる高度経済成長期はまだしも、現在の日本は、世界に遅れをとるようになってきている。

日本型雇用(日本的経営)は、専門的な「技術」を活かしにくいが、末端の人員が主体性と幅広い視点を持っている「現場力」に優れたシステムだからだ。

近年は、変化が激しく、あらゆるところが市場化・グローバル化の影響を受けている。状況が変わりつつあるので、これからも「現場力」にこだわり続けるのが最適とは言えない。だが、漠然と「昔の日本は技術大国だった」と考えているよりも、「日本は現場を重視する働き方だった」という視点を持っていたほうが、何かに活かせる可能性が出てくるだろう。

 

以上、日本の強みは「現場力」にあったのではないか、という視点の解説だった。何らかの参考になったのなら幸いである。

 

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