「会社を辞めたい」「転職したい」と考えている人は少なくないだろう。
しかし、「転職をすると今後の就職で不利になるかもしれない」と、不安になる人も多いと思う。
今回は、「転職の回数が多いと不利になるのか?」について、本当のところを解説していく。
また、
- 転職回数がむしろ評価につながる仕事
- 日本型雇用と転職との相性
- なぜ転職が過剰に持ち上げられるのか
- じゃあ、転職回数が多い人はどうすればいいのか?
についても解説していく。
転職回数が多い人材は避けられがち
結論から言うと、ほとんどの日本企業では、転職回数が多い人材は、あまり歓迎されない。
企業は、非常に高いコストをかけて、人材を採用している。
人材募集の広告に掲載するだけでもコストは発生するし、仲介エージェントを使った場合、年収の数十%を支払わなければならない契約になっている場合もある。
一人の社員を採用するにあたって、数十万は必要で、百万以上のコストがかかる場合も珍しくない。
会社側からすれば、雇った人材がすぐに会社を辞めてしまうと、採用にかけたコストのぶんだけ損をするのだ。
転職を繰り返す人を悪く言う「ジョブホッパー」という言葉もあるが、「辞め癖」のある人というのはたまにいて、そういう人は企業からするとなるべく避けたい。
「面接する側はどこを見ているのか?採用基準を把握して就活・転職に活かそう」の記事で解説したが、企業の採用担当者にとって、自分が採用を決めた人材がすぐに辞めてしまうのは「わかりやすい失敗」であり、まず何より避けたいことなのだ。
「すぐに辞める可能性のある人は、真っ先に避ける」というのが、企業の採用担当者の本音だ。
そのため、転職回数がやたらと多いと、不利になる可能性が高いことは否定しがたい。
転職回数がむしろ評価される場合
世の中には、転職回数が多いほど、むしろ評価される仕事もある。
「専門性」や「問題解決能力」が求められている場合、転職の経験は肯定的に捉えられることがある。
何らかの特定の技能や、特定の問題を解決する能力のある人材の場合、様々な会社でそれをやってきたほど、「どこの会社でも通用するスキルがある」と見なされ、高く評価されるのだ。
日本でも、「エンジニア・プログラマー」と言われる職種の一部は、このような基準で評価されることがある。
一つの企業にずっといるよりも、様々な企業を渡り歩いて経験を積んだ人材のほうが、実力があると見なされるのだ。
エンジニアの他にも、財務や管理やコンサルなど、特定の問題を扱う専門職は、転職回数が実力として肯定的に評価される場合がある。
ただこれは一部の業態のみであり、エンジニアであっても、転職のスパンが短いと避けられる可能性もある。
もちろん、専門性があるわけでなく、なんとなく転職を重ねたことが経験として評価されることはまずない。
日本の雇用システムの問題
日本の雇用システムは、「日本型雇用」と呼ばれ、「企業」の影響力が強い制度になっている。
欧米との比較で言うなら
- 日本は「企業」の影響力が強い
- 欧米は「職種」の影響力が強い
という違いがある。
日本企業では、社員は、「企業」に所属し続けているだけ出世していく。いわゆる「年功序列」である。
「企業」の影響力の強さは、「労働者の権利」にもなっていて、経営側は、社員を簡単に辞めさせることができない。その一方で、社員の職種(人員配置)の変更をする自由が認められている。
「日本型雇用」は、
- 労働者を簡単に辞めさせられない
- 労働者の人員配置の自由度が高い
のセットになっている。
欧米の雇用システムは、この事情が異なる。
職種(職務契約)を重視する欧米の雇用システムは
- 契約した職務がなくなれば労働者を解雇しやすい
- 契約した職務以外の仕事を強制することができない
のセットになっている。
「日本型雇用」は、経営側から見れば、「労働者を雇用し続けなければならないが、やらせる仕事の内容は自由度が高い」という雇用システムになっている。これは、単なる慣行ではなく、労働法や判例法理に裏付けられているものなので、一企業の独断で変えられるものでもない。
以上のような雇用システムのため、日本の労働者は「特定の専門性よりも、汎用的な職務対応能力と、企業への忠誠心が評価されがち」になる。
専門性を重視する枠組みになっていない「日本型雇用」の場合、欧米と比較しても特に、転職回数の多さがマイナス評価に繋がってしまいやすい雇用システムだと言える。
転職を勧める論調に注意
日本社会では、「転職をすると不利になる」という側面が少なからずある。
もちろん、上で述べてきたような「日本型雇用」の仕組みは限界を迎えつつあるので、状況がこれから変化していく可能性も大いにある。
しかし、「日本型雇用はいつからできたのか?今後どうなるのか?」の記事で述べたが、現在、「日本型雇用」は、「もう限界」と言われてから30年ほど経っているが、根本のシステムは変化していない。
「社会に根付いた制度はそれほど急速には変化しない」可能性もあるのだ。
それでも、特定のメディアにおいて「転職」を過剰に促すような論調が見られるが、「転職の仲介業は、転職させるほど儲かる」のが理由であることも多い。
「転職仲介業」は、労働者を転職させることによって仲介料を手にするビジネスモデルなので、転職を勧めるような主張をするのは当然だ。しかしそれはポジショントークであることが多いので、労働者は注意する必要がある。
転職を過度に恐れる必要はない
「転職の回数が多いと不利になる」のが本当のところだが、だからといって、過剰に転職を恐れる必要はない。
「転職しにくい社会」であることに甘んじて、労働者の待遇や給料を低く見積もる企業もある。自分の待遇が不当だと感じるならば、転職を考えるのは決しておかしなことではない。
そもそも、「入ってすぐに辞めた企業」は、履歴書にバカ正直に書く必要がない。
職務履歴書などにおいて、嘘を書くのは当然ダメだが、「書かない」のは別に問題ない。入社して半年以内に会社を辞めたとしても、それを職務履歴書に書かなければいいのだ。
「入社した企業をすぐに辞める」というのは、(企業側からすれば辞めてほしい案件だが)労働者側がそれほど恐れるようなことではない。
転職した回数が誰かに見張られているというわけでもないので、転職回数を過剰に恐れて、条件の悪い企業に居続けなければならないというのもバカらしい話なのである。
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