転職を考えている人のために、そのポジティブな面とネガティブな面の両方を解説していきたい。
転職を選択肢として検討している人は参考にしていってほしい。
目次
年収は「業種」で決まる
年収や待遇は、個人の能力や会社の業績にも左右されるが、より大きな要因として、「稼げる業種か?」によって決まることが多い。
例えば、
- 介護など、稼ぎにくい業種で働く優秀な人材
- 金融など、稼ぎやすい業種で働くそこそこの人材
を比較した場合、後者のほうが給料が高い場合が多い。
もちろん、やりがいや社会的意義などを考えると、給料の多い仕事ほど良いというわけにはいかない。
それでも、「待遇を良くしたい」「給料を上げたい」のであれば、能力が同じ場合、より稼ぎやすい業種に行くほうが有利になる。
「日本型雇用」のシステムのもとでは、業種よりも企業規模が重視されることが多いが、そのような日本社会においても、やはり「業種」というファクターは非常に大きい。
働いている中で、自分の働く業種の先が見える、ということもあるだろう。
「将来性のありそうな業界に行きたい」というのは、転職の理由の中でも好意的に捉えられやすいポジティブなものであり、転職の際に採用担当者を納得させやすい。
特に、まだ20代、30代の若い労働者であれば、将来性のある業種への転職を検討するのは、何もおかしなことではないだろう。
日本は異業種への転職をしやすい社会
日本の労働者は、欧米と違い、「日本型雇用」という雇用システムで働いているとよく言われる。
「日本型雇用」については、当サイトではいくつか記事を出しているので、詳しく知りたいのであれば以下の記事を参考にしてほしい。
「日本型雇用」は、「専門的な職務能力」よりも、「汎用的な職務対応能力」を重視する。
欧米の「ジョブ型」と言われるような働き方は、「会社を変えやすい一方で、職種を変えにくい」システムだ。
一方で「日本型雇用」は、同じ企業に所属しながら、様々な職務を経験していく働き方で、「会社を変えにくいが、職種は変わりやすい」システムだ。
日本型雇用だからこそ、転職は難しいのだが、その慣行の上でうまくやることができれば、「より待遇の良い職種」にステップアップしやすいという側面もある。
年収が上がる転職の一般的なイメージは、「前の企業で何らかの成果を出して、より待遇の良い企業にステップアップ」というものだろう。
だが、「これから年収が上がっていきそうな業種へ転職する」というやり方でも、「年収が上がる転職」は可能だ。
何も考えず転職をすると待遇が悪くなる場合が多い
転職をするときに注意したいのは、「日本型雇用」の仕組みの上では、基本的に転職するほど待遇が悪くなることだ。
「同一企業に企業に所属した年数によって、年収が上がっていく(年功序列)」というのが、日本型雇用の根幹にある仕組みだ。
「日本型雇用はいつからできたのか?今後どうなるのか?」の記事で述べたが、日本は、「企業」と「社員」が、「経済合理性」よりも「運命共同体」的に結びついているような働き方だ。
「長く働き続けた忠誠心に報いるために、年功序列で給料が上がっていく」あるいは、「年功序列で給料が上がってくからこそ、社員は企業に忠誠を尽くす働き方をする」という理屈なのだ。
日本型雇用において、転職をするということは、忠誠心の見返りとして与えられるはずの対価の放棄を意味する。その理屈において、転職をすると待遇は悪くなる。
もっとも、小熊英二『日本社会のしくみ』などで書かれているように、日本型雇用の仕組みで働いていたのは、その全盛期でも日本人の約3割ほどに過ぎず、それほど支配的なものとも言えない。
それでも、まだ「新卒一括採用」や「年功序列」のような制度は、日本社会において機能し続けているし、何も考えずにただ転職をすると、基本的に待遇が悪くなりやすいことには注意しなければならない。
転職回数が多いと労働市場で高く評価されにくい
「転職の回数が多いと不利になるのか?日本企業の本当のところを解説」の記事で詳しく書いたが、企業は人材の採用に大きなコストをかけているので、入社してから短い期間で退職されると、損失が大きい。
企業の採用担当者のほとんどは、自分が雇った社員がすぐに辞めてしまうことを恐れている。
もっとも、所属した企業のすべてを馬鹿正直に履歴書に書かなければならない決まりはないし、労働者側は短期間に転職することをそこまで恐れる必要はないのだが、むやみに転職を重ねた経歴は評価されにくいことは知っておきたい。
転職仲介ビジネスが転職を煽っている
メディアにおいて、転職が過剰にポジティブに持ち上げられる意見を見ることがある。
良識的なメディアのほとんどは、転職の良い部分と悪い部分の両方を併記しているが、それでも、「転職を推す」風潮にはなりがちだ。
なぜなら、転職仲介ビジネスが広告主だったりすることが多いからである。
労働者を転職させることで手数料を稼ぐ「転職仲介ビジネス」は、たくさんの人が企業を移動して人材の流動性が高くなるほど稼ぎやすくなる。
基本的に、日本社会においては、半端な気持ちで会社を変えないほうがいい。一方で、転職仲介ビジネスのポジショントークによって、過剰に転職のメリットが煽り立てられている側面があるので、そのようなものには気をつけたい。
転職はポジティブな状態のときに検討したい
人間は、追い詰められた状態では戦略的な判断ができないことが多い。
多くの人は、「やばくなったら転職すればいいや」というように、「回避」や「保険」として転職という選択肢を考えがちだが、「転職」はそのような手段にはなりにくい。
転職には、それなりの準備が必要であり、追い詰められた状態で転職を試みても、良い結果が出る確率は低い。
「より良い待遇や、より可能性のありそうな業種を求める」という形の転職には可能性があるが、「今の仕事から逃げたい」というモチベーションの転職は、下手すればより苦しい状況に陥ってしまうことにもなりやすい。
転職の準備は、戦略的な判断をしやすい、ポジティブな状況のときに行うべきなのだ。
人生はままならないことの連続なので、「苦しいから転職を考える」という場合がほとんどなのだろうが、「いざとなったときの手段」として転職を考えるのは悪手であることは頭に入れておきたい。
以上、「転職を検討するときに考慮したいこと」を解説してきた。
転職を考えている人の参考になったのなら幸いである。
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