転職エージェントを上手に使う方法

「転職エージェント」は、転職をする際の有用な手段だが、他人と関わる手間があるゆえに、心理的な負担はけっこう大きい。

転職エージェントも、ビジネスでやっているわけなので、利用者にとって完全に都合の良い存在にはなりえない。

今回は、転職エージェントを上手に使う方法を解説する。転職エージェントを検討している人、使う予定のある人は参考にしていってほしい。

 

まずはエージェントに好かれることから

これは、転職エージェントに限らず、仲介業全般に言えることかもしれないが、「エージェントに良い印象を持ってもらう」ことが、良い結果を出すために重要なファーストステップだ。

エージェントもプロなので、多少は無礼な人間を相手にしても、仕事はきっちりこなそうとしてくれるかもしれない。

しかし、ビジネスであると同時に、ひとりの人間でもあるので、「いい人だな」と思っているクライアントには、なるべく有利な状況を与えてあげたいと思うものなのである。

結婚したい男女のマッチングをする「結婚相談所」においても、仲人さん(エージェントさん)に好かれているかどうかが重要になる。誰を紹介するかの裁量はエージェント側にあり、自分が成功してほしいと思っている人には、なるべく有利な状況を融通したくなるからだ。

企業と人との出会いも、男女の出会いと同じことが言えるかもしれない。「掘り出し物の企業」や「たまたま人材を必要としている優良企業」などは、運やタイミングに大きく左右される。「エージェントに好かれる」と、それを優先して紹介してもらいやすくなるのだ。

結婚相談所であれ、転職エージェントであれ、仲介業(エージェント業)を利用するなら、「まずは自分の味方になってくれるエージェントさんに好かれる」を意識すると良い。

企業の面接に行くときは、誰もが印象を良くしようと丁寧に立ち回るが、それと同じくらいかそれ以上に、エージェントさんに対して良い印象を与えようと努力するべきなのだ。

過度に下手に出たり、変にうやうやしくする必要はないが、「丁寧な態度で人と接する」というのは、必要な労力に対して得られるメリットの期待値が大きい、お得なふるまいなのだ。

だが、「好かれる」といっても、何をすればいいのだろうか?

失礼な態度や横暴な態度をとらないことは当然だが、他の具体的な方法としては

  • 自分の情報を隠さずに伝えること
  • メールの返信を早くすること

を意識するとよい。

 

自分の情報は隠さずに伝えよう

裁判で争う際に、よく弁護士が困ることとして、クライアント側が「自分にとって不利な情報を黙っている」というのがあるそうだ。

弁護士はクライアントの味方であり、不利な要素などをすべて洗い出した上で、今後の戦略を練る。

弁護士がその不利な情報を知らず、後からそれが発覚した場合、組み立てていた前提が崩れて大惨事になる……ということも起こりうる。

同じようなことが、転職エージェントとクライアントとの関係にも言える。

転職エージェントは、クライアントの転職が決まったときに年収の何割かを手数料として得るビジネスモデルであり、「なるべく良い待遇の企業への転職を目指す」という点において、目的を一緒にしている協力関係にあると言える。

そのため、転職エージェントに相談する際には、「高く評価されたい自分」を演じるのではなく、「等身大の自分の状況」を素直に伝えたほうがいい。

人間が、自分を見繕うのは当然のことだ。

ビジネスにおいては、はったりも大事であり、同じ企業の社員や取引先が自分の味方とは限らないので、自分をさらけ出さない態度も必要だ。

だが、転職エージェントは、「客観的な状況を最初にすべて洗い出した上で、どういうはったりを効かせるかを一緒に考えていく」パートナーなので、「○○の経験がない」とか「実は○○が苦手」などのネガティブな情報も、できるだけ隠さずに伝えたほうが良い。

基本的に、世の中の大多数の人間は、気持ちよく語れるような立派な経歴なんて持っていない。

自分自身のことを客観的に話すのは、自分に抱いている理想と現実とのギャップを可視化するようなことなので、自己開示というのは基本的にやりたくないことなのだ。

それゆえに、ほとんどのクライアントは、転職エージェントに対しても、自分を大きく見せようとしたり、自分の経歴やスペックを上手に飾ろうとする。

ただ、転職エージェント側からすれば、最初から必要な情報を素直に渡してくれたほうが、「じゃあどうやって上を狙っていくか」という戦略を立てやすい。

クライアントが重要な情報を伝えないままだと、お互いに不信感が募るし、企業側に安心して紹介しにくくなる。

転職エージェントは、自分を審査する側の人間ではなく、一緒に高待遇を勝ち取ろうとしてくれる味方であることを意識して、必要だと思う情報は隠さずに伝えよう。

 

レスポンスの早さが重要

これは、エージェント関連のみならず、仕事全般に言えることかもしれないが、LINEやメールの返信などの「レスポンスの早い人」とは、仕事がやりやすい。

転職エージェントは、企業側と、クライアント(求職者)側との連絡を「受け持つ」役割を負う。

「企業側になるべく早く返信したいのだけど、求職者側からの返事がなかなか来ない」という状況は日常茶飯事だ。

そのような仲介業において、「返信が早く返ってくる」というのは、それだけで非常にありがたいことなのである。

恋愛などの人間関係において、LINEなどを「即レス」するのは、「必死すぎる」「余裕がない」などと思われ、ちょっと時間を空けて返すのが普通、みたいな風潮がある。仕事においても、ルーティンワーク系の業務連絡などは、ちょっと返事が遅いくらいのほうがお互いに楽だったりする。

しかし、転職エージェントなどの仲介においては、即レスであるほど仕事がしやすい。

「常に即レス」というほどでなくとも、「基本的に返信が早い」というだけで、エージェント側としては、印象が良くなりやすいし、優先度が高くなりやすい。

返信が早い人と遅い人とで、どちらに良さげな求人を紹介するかとなると、早い人のほうを選びたくなるのだ。

「社会人・ビジネスパートナーとしては、レスポンスが早いほど信頼できる」となる状況はそれなりにあって、文面にこだわり過ぎて遅くなるよりも、返信速度を意識したほうが、相手からの信頼を勝ち取りやすいことは覚えておこう。

「エージェントに好かれる」となると、何か難しいことのように思えるが、

  • 丁寧な態度で接する
  • 情報は誠実に伝える
  • 返信が早い

だけでも、他よりも「優先度を高くしたいクライアント」と思われやすくなるので、意識して頑張ってみてほしい。

 

選択肢が自分にあることを意識

エージェントに対して、丁寧に接することは重要だが、「押し切られる」ことは避けよう。

転職エージェントは、「転職が決まったときに仲介手数料が入る」というビジネスモデルである以上、とにかく転職させたがる。

エージェントの推しの強さに負けて、「それほど望んだ企業ではないけど、転職を決めてしまう」ということも起こりがちだ。

最終的な選択肢が自分にあることを常に意識して、「譲らないところはしっかり主張する」という姿勢が大事だ。

「丁寧に接する」と「条件を譲らない」は両立するし、それをできるのがちゃんとした社会人の立ちふるまいとも言える。

また、転職エージェントが、自分のところで転職を成立させようと圧力をかけてくることを前提に、サービスを使う前から「断りやすさ」を意識して活動すると良い。

その具体的な方法として

  • 複数のエージェントを同時並行で使う
  • 積極的にエージェントに質問を投げかける

が有効だ。

 

複数のエージェントを同時並行で使うのは有効

転職エージェントは、複数のサービスを掛け持ちで使うのが有効だ。

「それをやるとエージェントからの心象が悪くならないか?」と不安になるかもしれないが、そんなことで心象を損ねるようなエージェントは、あまり優秀でない可能性が高い。

エージェント側からすれば、他のエージェントと競い合うのは当然で、その上で自分が良い待遇の求人を引っ張ってくる仕事なのだ。

ただ、心象が悪くなりやすい掛け持ちのやり方として

  • 複数の転職エージェントを使いながら、「他の転職エージェントは使っていない」と嘘を言う
  • 転職までのステップが順調に進んでいる途中で、新しく別のエージェントに登録する
  • 登録しているエージェントの数が多すぎる

などは、あまり良い印象は持たれないだろう。

変に配慮して、「他にエージェントを使っていない」と嘘をつくよりも、「ここの他には○○社を使っています」と最初から正直に言ったほうがいいし、それで何の問題もない。

同時並行でいくつかのエージェントを使うのは、求職者にとっては当然のことだ。

ただ、転職を考えた初期の段階から複数を使うのは問題ないが、転職がうまく行っている途中に新しいエージェントに登録するのは、担当者からすれば「なんでそんなことするの?」となるだろう。

何らかの不満があるのであれば、新しくエージェントに登録するのはおかしなことではないが、採用のステップが進んでいる途中に「新しく○○も登録しました」というのはあまり印象が良くない

また、使っているエージェントの数がやたら多い場合も、エージェント側からすると警戒の対象になる。

そもそも、やり取りの手間などもかかるので、たくさんの転職エージェントに登録すると大変だ。

転職エージェントを同時並行で使うのは有効だが、その数は「2、3社」が標準的と言える。

1社だけだと比較検討ができないので、自分を担当しているエージェントが優秀かどうかわからない。だが、4社以上ともなると多すぎる。

複数のエージェントを同時並行するのは有効な手段だが、「普通は2社、多い人で3社」が標準的だ

また、掛け持ちをする場合は、途中からよりも、できれば転職を始める初期段階から複数を登録したほうが、むしろ問題は起こりにくい。

 

エージェントに質問をしてみる

転職エージェントを使うときにおすすめなのは、「質問」を投げかけることだ。

質問の内容としては、例えば

  • 自分の経歴から、履歴書や面接において何をアピールしていけば良いか?
  • (紹介された企業に対して、)その企業はどういうビジネスモデルになっていて、なぜこの額の給料を自分に提示できるのか?
  • その企業は、どういうところに将来性がありそうか、逆に不安な要素は何か?
  • その企業において、誰が決裁権を持っていて、どのような意思決定で採用が判断されるのか?

みたいな感じだ。

自分を担当するエージェントに積極的に「質問」することは、最終的な「断りやすさ」を意識するという点でも役立つ。

転職エージェントは、なるべく自分のところで転職を決めようとしてくるので、それまで頑張ってくれていたエージェントを「切る」のは、心理的な負担がけっこう大きい。

そして、往々にして、あまり実力のない転職エージェントは、「これまで一生懸命やってきたのに」という「情」や「申し訳なさ」に頼ろうとする。

しかし、上で述べたように、同時並行で転職エージェントを使い、「別のエージェントのほうが質問に適確で、良い条件を持ってきてくれた」という形にすれば、断りやすいし、切られたエージェント側としても「同業者に実力で負けた」ことになるので、納得しやすくなる。

転職エージェントの業界において、先に成果を出したほうに報酬が入るというルールは、全員が納得している正当な競い合いだ

そして、「答えるのに実力が必要な質問を積極的に投げる」というのは、「転職エージェントの実力が可視化される機会」を提供し、「情」や「絆」という面倒くさいものを避けるように機能する。日頃からそのようにしていたほうが、最終的に「切った、切られた」となっても、ビジネスとしてお互いに納得できる形に落ち着きやすい。

もっとも、質問をするときの注意点として、「即答できるかどうかで、エージェントを値踏みする」という形にならないようにしたい。

転職エージェントも、一人の社員(あるいは事業家)であり、成長していこうとするビジネスパーソンだ。クライアントから質問を投げかけられたら、自分がそれをちゃんと回答できるように調べるなり勉強するなりして、転職エージェントとして成長していくのだ。

転職の仲介に関しては、理想通りにいくよりも「破綻する」ことのほうが多いのだが、担当した転職エージェント側が、「頑張ったけど熱意を裏切られた」と感じるのではなく、「自分の実力が足りなかった」と納得できるようにするのが、双方にとって良い終わらせ方なのだ。

そのために、たくさん質問することで、実力を発揮できる機会を提供するのが、上手な転職エージェントの使い方になる。「値踏みする」のではなく、「一緒に成長していくため」に質問を投げるのだ。

転職エージェントに対する質問には

  • 自分が有益な情報を得られる
  • エージェントに実力を鍛える機会を提供する
  • 実力が表れる機会を提供することで、双方が納得できる形で「断りやすくなる」

というメリットがある。

 

まとめ

  • 転職エージェントも人間なので、気に入った人になるべく有利な機会を提供したくなる。「エージェントに好かれること」は、上手にサービスを利用するためのファーストステップだ。
  • 好かれるための具体的な方法としては、「情報を誠実に伝える」と「早いレスポンス」を意識するのが良い。
  • 「転職が決まったときに手数料が入る」転職エージェントは、とにかく自分のところで転職を決めようとしてくるが、選択肢が常に自分にあることを意識し、大事な条件は譲らないようにする。
  • 転職エージェントは、比較検討するためにも、2、3社のサービスを同時並行で使うのが良い。掛け持ちをするのであれば、1社の途中から新しく登録するよりも、転職活動を始める初期段階から複数に登録したほうがやりやすい。
  • 転職エージェントに実力を表す機会を提供し、最終的に「情」や「絆」を排して「断りやすく」するためにも、エージェントに対しては積極的に質問を投げるのが良い。

以上が、「転職エージェントを上手に使う方法」になる。

長くなったが、何らかの参考になったのなら幸いだ。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。