日本で働く会社員が年収を上げるためには何をすればいいか?

今回は、「日本で働く会社員が年収を上げるためには何をすればいいか?」について書く。

「起業する」「独立する」などはナシで、あくまで「会社員」の視点で論じていく。

「年収を上げたい!」と多くの人が思っているだろうが、よければ参考にしていってほしい。

会社に居続ける

いきなり面白みのないことを言うが、日本人の会社員にとって、年収を上げるための最も現実的な方法は、「会社に居続ける」ことだ。

まだ日本は「年功序列」の社会だ。日本型雇用の慣行と制度のもとでは、正社員であれば、会社に居続けることで給料が上がっていく。

最近の意識高い系メディアでは、「年功序列はもう終わり!」という論調のものが多い。

しかし、ほとんどの労働者が考えているよりも、「日本型雇用」における「年功序列」の仕組みはずっと強固なものだ。

くどくどしい説明は省くが、「年功序列」などの「日本型雇用」の仕組みは、裁判所の判例法理や、「労働協約」や「就業規則」などの「法源」に裏付けられている。(参考:水町勇一郎『労働法入門』の要約と解説

ようは、「年功序列」は、たんなる習慣ではなく、一定の法的効力を伴うものなので、経営者の一存によってそれを止められるわけではないのだ。

経営者側は、年功序列を止めたいと思っていても、「じゃあ止めます」とできるわけでない。

最近では、トヨタが年功序列を廃止しようとする改革を打ち出して話題になった。だが、20代の社員と50代の社員が同じ給料になるみたいなことがすぐ起こるわけではない。あくまで「年功序列を緩和していきたい」という意思の表明に過ぎない。

「年功序列」や「日本型雇用」については、当サイトの別記事で詳しく解説しているので、より詳しく知りたいのであれば参考にしていってほしい。

 

重要なのは、「技術の進歩は凄まじく早いが、制度の進歩は時として遅い」ということだ。

電子機器やゲームなど、動きの早い業界を見れば、ここ30年ほどで、驚異的な発展が起こっていることがわかる。一方で、FAXやハンコなど、どう考えても合理的ではないのにいまだに残り続けているものもある。

日本型雇用はいつからできたのか?今後どうなるのか?」で詳しく述べたのだが、実は、「日本型雇用」は、「もう終わる」と言われてから30年経ってもなお、強い影響力を持ち続けている。今もほとんどの企業で、「年功序列」によって社員の給料が決まっている。

「年功序列」のような制度は、その制度から利益を得られる人が必死に守ろうとするものなので、多くの人が考えている以上に長く続く可能性がある

今の20代、30代の労働者も、年功序列の恩恵を受け続けられる可能性は、それなりに高いだろう。

そして、「技術の進歩が早いからこそ、制度の進歩の遅さに守られる」という側面があるのだ。

「実力がなく、制度に守られている労働者」というのは、かっこ悪いし、憧れる姿ではないだろう。しかし、現実的なことを考えれば、自らがトップクラスの実力を身につけるよりも、制度の恩恵に預かるほうが、収入の期待値が高いことは十分にあり得る。

日本企業で働く労働者である以上は、「年功序列」を軽視すべきではない!

もっとも、多くの労働者が恐れているのは、年功序列の制度に安住していたところで、会社が潰れるなりリストラされるなりすることだろう。それを恐れているからこそ、日本型雇用を否定するメディアが求心力を持つし、「スキルを身に着けて年収を上げる」という考え方が支持されやすい。

ではここからは、「会社に居続ける」以外の方法で、年収を上げる方法を解説していく。

 

転職する

会社員には、「転職して別の会社に移る」という選択肢がある。

上で述べた「年功序列」の影響が強いゆえに、日本社会は、良くも悪くも、「人が会社を移動しにくい社会」だ。

「会社の移にくさ」に甘えて、労働者の待遇を低いままにしている企業は存在する。

また、少子高齢化の日本においては、若い世代が少なくなり、局所的な人手不足も発生している。

待遇が良い企業、将来有望な企業なのに、人が来ないから人材を募集している、重要なポストが空いている、ということは珍しくない。

日本は、転職しにくい社会だからこそ、有利な転職をできるチャンスが転がっているのだ。

正社員の場合、転職は、準備や面接をこなさなければならないし、非常に面倒で労力のかかるものだ。そのため、転職したいと漠然と考えている人は多くても、「長期的なキャリアを見据えて十分な準備をした転職」ができる人は少ない。

今の会社に居続けていてもあまり良い展望が見えそうにないのであれば、転職によって職場を変えることで、可能性が開けることは十分にある。

当サイトでは、以前に「転職によって年収を上げる方法」という記事も書いているが、転職で年収が上がるパターンをざっくり言うと

  • より規模が大きく、より待遇の良い大企業にキャリアアップする
  • 自分の経験やスキルを高く買ってくれる企業に移る
  • より将来性のある業界に移る

などがある。

転職によって年収を上げること自体は、多くの会社員が思っている以上に、難しいことではない。特に、20代、30代の正社員であれば、ほとんどの人が、「年収の上がる転職」をすることが可能だろう。

「転職サイト」や「転職エージェント」では、転職の際に「年収」が提示される。単純な話、自分のもとの職場よりも高い年収が提示されている企業に就職が決まれば、それでもう「年収が上がる転職」は可能だ。

しかし注意したいのは、年功序列の日本型雇用において、「短期的に年収が上がる転職」と「生涯年収が上がる転職」は別物であることだ。

「今は自分の労働力を高く買ってくれるけど、将来性があるわけではない企業」に移動してしまうと、自分のキャリアにとって不利になってしまうことはよくある。

転職エージェントに相談すると、基本的には転職することが強く勧められる。転職仲介は、仲介が決まることで手数料が入るビジネスなので、転職を勧めるのは当然だ。だから、その転職に将来性があるかどうかは、自分自身で判断する必要がある。

転職については、

といった記事も書いているので、よければ参考にしていってほしい。

 

副業

年収を上げるための手っ取り早い方法として、「副業」を考えたことのある会社員は多いだろう。

「会社とは別に月数万稼げるだけでもだいぶ違う」と、誰もが考えるものだし、「自分で金を稼いでみる」経験は、ビジネス力や経営者目線を身につける上でも有効かもしれない。

「会社員がやりやすい副業」の例を挙げるなら

「広告で稼ぐ系」としては

  • 動画投稿
  • ブログ
  • SNS運営

 

「制作して納品する系」としては

  • 内職
  • プログラミング
  • ライティング
  • 動画編集

 

「金融系」としては

  • 株式投資
  • 不動産投資
  • FX

 

他には

  • 物販
  • 治験
  • UberEats
  • Airbnb

などが挙げられるだろう。

 

だが、基本的に、「一から副業を始めて、収益を出す」のは、多くの社会人が想像している以上に難しい。

SNSやメディアでは、ごく一握りの稼いでいる人がピックアップされるが、上で挙げたような「わかりやすいビジネス」は、どれも競走過多のレッドオーシャンであり、それを「本業」でやっている人がたくさんいるような状態だ。

特別な知見や機転を持っているわけではない普通の会社員が、「副業」で金を稼ぐことはかなり難しいし、もし稼げたとしても割に合わないことが多い。

とはいえ、副業を始めたいのであれば、とりあえずやってみると良い。「いつでも始められるし、いつでも辞められる」ことが、副業の何よりのメリットだ。多くの会社員は、「副業」の気楽さに惹かれるし、自分で実際にやってみて現実を知る。

「副業」に手を出してみると、たいていは、「会社員である自分の立場がどれだけ恵まれているか」に気づくことになる。その意味でも、副業をやってみる意味はあるだろう。

「副業で稼げる」的な情報商材に手を出すのでなければ、とりあえず気になる副業はやってみると良いだろう。

なお、副業においておすすめなのは、本業と関連する分野に手を出すことだ。

例えば、本業に関連した情報発信を、YouTubeやブログでやることで、思わぬファンを獲得し、広告収入などに繋がる場合があるかもしれない。

また、本業でプログラミング関連の仕事をやっている人が、空いた時間に別の受託案件をやってみたりするのも、副収入やスキルアップに繋がりやすい。

 

資格やスキル

「資格を取得して」「スキルを身に着けて」キャリアアップというのも、多くの会社員が考えることだろう。

まず「資格」だが、働いている企業がその資格の取得を推奨している場合、努力する価値は十分にある。

例えば、不動産関連の会社が「宅建」を取ることを従業員に勧めている場合などは、その資格のために勉強するのは、やったぶんの努力が成果に反映されやすい、かなり割の良い投資になる。

では、業務と直接は関係なく、会社がその資格を特に推奨しているわけではい場合はどうだろうか?

資格については、「「資格」は就職に役立つのか?意味がないのか?」の記事で詳しく述べたが、日本社会において「資格」は、一発逆転の手段になるわけではない。

学生ならともかく、すでに働いている会社員が、何らかの難関資格を取得しても、それだけで状況が一気に改善することはあまりない。

例えば、試験のみで受験できる超難関の代表格「公認会計士」の試験に受かったからといって、監査法人で働く会計士のキャリアを一から始めるのならともかく、普通の会社員にとってはほとんど意味がないだろう。

「すげー!」とはなるし、ポテンシャルの高さが評価されて出世しやすくなることはあるかもしれないが、どう考えても必要な労力に対する効果が割りに合わない。

資格は、「何をやればいいかが明確で、やったぶんの努力が形になりやすい」のがメリットではあるが、費用対効果が良い方法ではないし、会社員にとっては一発逆転の手段にはなりにくい。

会社がその資格を推奨している場合を除いては、あまり「資格」に期待し過ぎないほうがいいだろう。

特定の「スキル」に関しても、「資格」と似たことが言える。

その職務に関連するスキルであれば、全力で勉強して、身につけようとするべきだろう。

だが、「仕事と直接関係ないが、いつか役に立つかもしれないから、○○のスキルを身に着けよう」というのは、あまりおすすめしない。趣味の延長で楽しくやるぶんにはいいが、年収を上げるための効果的な方法にはなりにくい。

「最近はITの時代だから、会社員もプログラミングをやってみよう」みたいな風潮があるが、職務で通用するレベルのスキルは、プログラマーとしてIT企業に就職して一からやってみるくらいのことをしなければ身につかない。

「資格やスキルによってキャリアアップ」は、良い方法と思われがちだが、現実はゲームとは違って、そんなに簡単に資格もスキルも身につかない。

それぞれの資格職や専門スキルは、それを本業でやっている人がなんとか成り立っているものなので、甘い気持ちで考えるのはおすすめしない。

 

まとめ

長くなったが、この記事で述べてきたことを以下にまとめる。

POINT

  • 会社に居続けるだけで年収が上がる「年功序列」の仕組みは、ほとんどの会社員が思っているよりも強固なものだ。かっこ悪くても「年功序列」にしがみついたほうが、収入の期待値が高い場合が多い。
  • 日本は転職がしにくい社会だからこそ、転職には多くのチャンスがある。将来性のある企業や業界への転職によって、より有利なキャリアが開ける場合もある。しかし、安易な転職にはリスクもある。日本が「年功序列」の社会であることも考慮した上で、「生涯年収が上がる転職」を目指したい。
  • 副業はどれも簡単ではないのでおすすめしないが、「始めやすく辞めやすいこと」が副業のメリットなので、気になるならばやってみるとよい。やるのであれば、自分の仕事に関連する副業がおすすめ。
  • 企業が推奨している資格やスキルは、全力で取り組む価値がある。だが一方で、職務と直接関係のない資格やスキルは、労力に対する成果が見合わない場合が多いのでおすすめしない。

これが、「日本で働く会社員が年収を上げるためには何をすればいいか」の回答になる。

面白みのない内容に思えたかもしれないが、結論はシンプルで、「目の前の仕事にフルコミットしろ!」ということだ。

変に副業や別のスキルに手を出すよりも、「自分が今いる場所で全力で頑張る」のが、最も費用対効果が高い方法である場合が多い。

もし、自分の本業の内容が、頑張るに値しないと思えるのなら、「全力を出したいと思える職場」への転職を考えるのも手だろう。

日本社会において、年収というのは短期的には上がりくい。だが、長期的な視点を持って努力できれば、確実に年収は上がっていく。

安易な転職、副業、資格に飛びつかず、「目の前の仕事を頑張ること」「長期的なキャリアを見据えること」が、年収を上げるための王道の方法だ。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。