労働問題はどこに相談すればいい?違法残業、解雇、ハラスメントなどの相談先を解説

会社で何らかの労働問題が起こったとき、どこに相談すればいいのだろうか?

  • 労働時間の上限を超えて働かされる
  • 法定労働時間を超えているのに残業代が支払われない
  • 会社側の都合で一方的に解雇を言い渡された
  • セクハラやパワハラを受けている

といった場合、相談先はどこなのか?と迷う人は多いだろう。

日本では、「労働局」「労働委員会」「労働基準監督署」などの組織や部署があって、労働者からすると「どこに相談すればいいのか?」がわかりにくい。

結論から言うと、厚生労働省の労働相談コーナーのサイトから、会社のある地域のリンクに飛んで、そこに書いてある電話番号へ相談するといい。

この記事では、もう少しちゃんとしたことを知りたい人のために、「労働局」「労働委員会」「労基」の違いや、「労働組合」「法テラス」「弁護士」への相談についても解説していく。

総合労働相談コーナー(都道府県労働局)

冒頭で紹介した「総合労働相談コーナー」へ電話をすると、「都道府県労働局」に相談することになる。

労働問題は、「国の機関」が一律で対応しているわけではなく、都道府県にそれぞれ対応する局があるのだ。

もちろん、行政機関ではあるので、「無料」「予約不要」「秘密厳守」を掲げている。

どのような問題でも、労働に関するものであるならば、とりえずはここの窓口から電話で相談するのがいいだろう。

「労働基準監督署」や「労働組合」など、別のところへの相談が適切だった場合でも、適切な相談先を教えたり、取り次いでくれるので、「これから何をすればいいか検討もつかない」「どこに相談すればいいのかもわからない」という人は、まずは「総合労働相談コーナー」に電話をかけて、自分の状況を説明してみよう。

「何時から何時までやっているか」「電話が繋がりやすいかどうか」などは、地域によって異なるのだが、労働問題に関する一般的な相談先としてはまず間違いがない。

【総合労働相談コーナーのご案内―厚生労働省】https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

 

労働基準監督所

「労働基準監督署」は、「労基」と呼ばれることが多く、一般的には、「労働局」よりも「労基」のほうが認知度が高いかもしれない。

労働者が相談しようと思ったとき、「労働局」と「労基」の違いや位置づけがわかりにくく、どちらに相談すればいいか混乱するかもしれない。

県にもよるが、「労基」は、「労働局」に属する一つの部署だったり課だったりすることが多い。

例えば、「○○県労働局」の「労働基準部」の「監督課」のことが、「労働基準監督署」と呼ばれている。

「労基」のことを、国が管轄する一つの大きな組織というイメージを持っている人もいるかもしれないが、それぞれの県の「労働局」の下部組織として、数多くある部署のような感じだ。

では、上で「労働局」の「労働相談コーナー」を紹介したが、それと「労働基準監督署」の、どちらに相談すればいいのだろうか?

厚生労働省のサイトの労働基準行政の相談窓口では、以下のように分類されている。

「労働基準監督署」は、

  • 賃金、労働時間、解雇などの法令違反などについて相談したいとき
  • 事故、災害が発生したとき
  • 労災保険について相談したいとき

 

「総合労働相談コーナー」は、

  • 法令に直接違反しない労働条件変更、解雇などについて相談したいとき
  • 労働問題について相談したいが、どの分野に該当するか分からないとき

 

労働時間の上限を守らない、残業代を支払わない、不当な解雇など、企業が明確に法律を違反している場合は、「労基」へ報告するのがいいかもしれない。

ただ、「労基」は、あくまで「企業が労働法に違反していないか監督・指導する」部署であり、労働者と企業を調停しようとしてくれるわけではない。「労基」が注意することによって企業側がやり方を改め、結果として問題が解決することもあるが、労働者をサポートしてくれるわけではないのだ。ハラスメントなど、違法かどうかが明確になりにくい問題は、「労基」は対応できない。

「総合労働相談コーナー」は、次にどこに相談すればいいかも含めてガイドしてくれる役割を持つので、どちらか迷うのなら「総合労働相談コーナー」に相談するのがいい。同じ「労働局」なので、「労基」の案件だった場合には、取り次いでくれるか、適切な連絡先を教えてくれるだろう。

相談コーナーであまり良い回答を得られなかった場合や、なかなか電話が繋がらない場合は、労基のほうに直接連絡することもできる。

【都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧】https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html

 

都道府県労働委員会

「労働委員会」は、労働法において重要な位置づけを占めるもので、労働争議の「斡旋、調停、仲裁」を行う役割を担う。

「公益を代表する委員(公益委員)」、「労働者を代表する委員(労働者委員)」、「使用者を代表する委員(使用者委員)」の三者から構成され、委員会のメンバーの一覧はホームページに公開されている。

地方自治法に定めがあり、各都道府県に置かれている。(「中央労働委員会」は国の機関だが。)

属人的な面が強い制度で、地域にもよるだろうが、形骸化している場合もある。

個別の労働紛争の相談は受け付けていないところもあり、ブラック企業の問題やハラスメントなど、現代においてよくありがちな労働問題について相談しても、ちゃんと対応してもらえない可能性がある。

基本的には、「労働委員会」よりも先に、上で紹介した「労働局」の「総合労働相談コーナー」に相談してみることをおすすめする。

しかし、相談コーナーの電話がなかなか繋がらない場合や、あまりちゃんと対応してもらえなかった場合などは、もしかしたら「労働委員会」に相談してみると、期待した結果が得られることもあるかもしれない。

【都道府県労働委員会所在地一覧―中央労働委員会】https://www.mhlw.go.jp/churoi/chihou/pref.html

 

労働組合

労働法上や、社会の慣習上、労働問題の解決手段として非常に重視されているのが「労働組合」だ。

何らかの労働問題が起こったときは、労働者が「労働組合」に相談し、組合と経営側の話し合いにおいて解決を図っていくというのが、労働問題のオーソドックスな解決法とされてきた。ただこれは、20世紀的な価値観かもしれない。

最近ありがちな、ブラック企業などの問題の多くは、そもそも労働組合がまともに機能していない会社だからこそ起こる場合が多い。

企業の不正に苦しみ、その企業から離れたいと思っている人にとっては、「労働組合」は妥当な選択肢ではないかもしれない。

しかし、「問題を解決した後も、その企業で働き続けたい場合」は、「労働組合」への相談を最初の選択肢にするべきだ。

水町勇一郎『労働法入門』の第9章「労働法はどのようにして守られるのか」では、「労働者が問題を抱えたとき」のガイドラインとして、最初に「労働組合」への相談を挙げている。

(水町勇一郎『労働法入門』より引用)

 

労働問題が起こったとき、労働組合に頼るというのは、問題解決のオーソドックスな方法として位置づけられている。

労働組合がどれくらいちゃんとしているものなのか、どれくらい信用におけるものなのかは、その会社によるだろうが、「行政の窓口」や「弁護士」だけでなく、「労働組合」という選択肢があることを頭に入れておくといいだろう。

その企業で働き続けるために問題を解決したいならば、労基に告発したり、弁護士を雇って対立するよりも、企業の内部の労働組合に相談して、話し合う形で解決を図るほうが穏便だ。

その会社そのものではなく、その会社の特定の状況や、特定の人物に苦しんでいる場合は、労働組合が対応してくれる場合が多い。

逆に、「すでに会社を辞める腹積もりを決めている」「会社の問題を外部に公表したい」という場合、労働組合は会社の内部にある組織(日本は企業別労働組合が多い)ので、ミスマッチになる可能性が高い。

 

法テラス

「法テラス」は、正式名称は「日本司法支援センター」で、法務省が管轄する独立行政法人だ。

法律問題全般を扱っていて、もちろん「労働関連」の問題にも対応している。

一般人がいきなり弁護士に相談するのはハードルが高いから、案内する窓口を儲けようという目的で設立された。

あくまで「情報提供を行う窓口」であり、「法テラス」が問題を解決してくれたり具体的な相談に乗ってくれるわけではないが、弁護士への相談を視野に入れているのならば、一度は覗いてみるべき有用なサイトだ。

【法テラス公式サイト】https://www.houterasu.or.jp/index.html

 

弁護士

日本でも、労働問題に関する意識は高まっていて、2019年から施行された「働き方改革法案」では、労働法を守らない企業への罰則が強化された。

しかしそれでもなお、労働に関する企業の法律違反が、すぐに刑事事件として取り締まられるケースは多くない。「労基」に告発し、ちゃんと証拠を提示したとしても、最初は「是正勧告」という注意のような形で済まされることが多いだろう。

「労働局」や「労働委員会」も、企業に強制力を持って働きかける権限を持っているわけではないし、あなたの労働問題にリソースを割いてくれるわけではない

一方で、「弁護士」は、あなたの味方であり、あなたのために企業と交渉をしてくれる。

その代わり、「弁護士」は有料だ。

弁護士にかかる費用はバカにならないので、弁護士を雇うのは最終手段と考えていいだろう。

「残業代」や「会社都合退職」を狙う場合、自分で会社と交渉できるならそのほうがいいかもしれない。

労働問題が起こったとき、弁護士を雇ってまで企業に立ち向かうメリットがあるかと言えば、そうでない場合が多い。こちらは弁護士費用を負担しなければならないが、そこまでやって会社にダメージを与えても、自分の利益になるわけではない。

もっとも、残業代が未払いである場合は、弁護士を雇って交渉することで採算がとれる場合もあるだろう。

弁護士は、最初の相談は比較的低コストでできる(1時間あたり5000円から1万円が相場)ので、そこで見積もりやアドバイスをもらうといいかもしれない。

弁護士の探し方について、詳しい知り合いに紹介してもらえればそれがいいのだが、ツテがない場合は、「法テラス」の窓口や、「残業代 弁護士」「パワハラ 弁護士」と検索ワードに打ち込んで探すことになるだろう。

 

以上、「労働問題の相談先」を解説してきた。

当サイトでは、「労働時間の上限」の解説や、「証拠」の集め方や、ブラック企業の特徴などについての記事も出しているので、よければ以下も参考にしていってほしい。

 

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