退職代行は使う必要がないのか?メリットとデメリットを解説

日本では、「退職代行」という闇の深いサービスが流行している。

労働者は、「辞表」を出せば会社を辞められるのだが、それを「代行」するのが「退職代行」だ。

料金は以外と安く、3万円から5万円が相場。

ただ、そもそも労働者は「無料」で会社を辞めることができる。

「会社を辞められること(無理やり働かされないこと)」は、労働者が持つ強い権利であり、「代わりの人を連れてこなければ辞めさせない」とな「辞めるのなら賠償金を払ってもらう」というのは、明確に会社側が悪い。

労働者側は、退職届を一方的に送りつけて、そのまま会社との連絡をすべて断てば、それだけで退職することができるのだ。

ではなぜ、退職代行がこれほど流行しているのか?

労働者は、退職代行を使う必要がないのか?、それとも、それなりに使う意味のあるサービスなのか?

この記事では、労働法、社会通念、道義的正当性などの観点から、退職代行のメリットとデメリットを解説する。

「退職代行」を検討している人にとっては参考になる内容だと思う。

労働者は本当に辞める自由があるのか?退職代行のメリットを解説

労働者の「辞職」については、「民法第627条」の規定が重視されている。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
(民法六二七条一項)

通常の正社員雇用やパート・アルバイト雇用の場合、「2週間前に申し入れればいつでも会社を辞めることができる」ことになっている。

この「2週間前」というのが問題だ。

会社の圧力や居心地の悪さに苦しんでいる人は、辞表を出して辞めると宣言した状態から「2週間」も働かなければならないとなると、「え、地獄じゃん」と感じるかもしれない。

この「2週間」の規定があるからこそ、「辞めたいのに言い出せない」という人は多い。

そして、多くの労働者が気になるのは、「2週間を待たずにいきなり辞めて大丈夫なのか?」ということだろう。

「2週間」の経過を待たずに辞めた場合どうなるか?だが、これについては、明文化された規定がない。

では、例えば、労働者がFAXや郵送で「辞表」をいきなり会社に送りつけて、その日から出勤せずに会社からの連絡をすべて断った場合だが、普通に「辞職」できるし、たぶん会社側は何もできない。

いきなり辞めて、業務の引き継ぎなども放り出した場合、会社側から損害賠償されるのではないか?と恐れる人もいるかもしれないが、よっぽどのことがなければ損害賠償は認められない。

「無理やり働かされない権利」「自分の意思で会社を辞めることができる権利」を、労働法はかなり重く見ているので、「辞めること」に関しては基本的に労働者側が有利だと考えていいだろう。

労働者が意図的に不正をしたわけではなく、単に「辞めただけ」で発生した損害に対して、その賠償を裁判所に認めさせるのはかなり難しい。そんなことで裁判を起こして仮に勝ったとしても、弁護士費用などを考えると絶対に割に合わない。

仕事上で起きた損害に関しては、基本的に雇ったほうの責任が重く見られやすい。そもそも、労働者が仕事中に何らかの大きな失敗をしても、雇用している会社側が損害賠償を請求するのはかなり難しい。もし損害賠償されても、過剰な労働やプレッシャーで不調をきたしたなどと労働者が言えば、企業側のほうが立場が悪くなりやすいだろう。

下手に損害賠償請求をした場合、逆に企業側が、ネット炎上したり、労基から是正勧告を食らったりするかもしれない。そのため、まともな企業は「いきなり辞めた」労働者に損害賠償をしたりはしない。

管理職などの重要な役職に就いていて、急に仕事を放り出すことで大きな損失が明確に発生したという場合ならまだしも、一般労働者が急にやめて、それに対して会社がちょっと手間取ったくらいでは、会社側は何もできない。

長くなったが、何が言いたいかというと、「辞表を送ってそのまま連絡を断っても大丈夫」ということだ。

それでは、あえて「退職代行」を使うメリットは何だろうか?

まず、世の中にはヤバい会社があることだ。

コンプライアンス意識が欠如している企業は、労働法とか、裁判になった場合の正当性とかに関係なく、急に辞めた労働者に罰を与えるような振る舞いをしてくる場合がある。鬼電してくるとか、訴訟をちらつかせるなどしてきた場合、辞めた労働者の心理的な負担は大きいだろう。

日本型雇用の働き方においては、企業はドメスティックな規範を重視しがちであり、身内に対して横暴になってしまうことがある。

そのようなとき、弁護士事務所や労働組合がバックについている「退職代行」が、労働者の代わりに退職の手続きをすれば、辞めた社員への嫌がらせなどに対する牽制になる。

また、道義的な正当性の面でも、「退職代行」を使うことは労働者に有利に働く。

「即日退去」をする場合、真面目な労働者ほど、道義的な面で心理的な負担を感じることが多い。

辞職するのは労働者の自由であり、辞職を言い出しにくい状況を作っている企業側がそもそも悪いのだが、「退職代行にお金を払ってまで辞めたかった」のであれば、いきなり仕事を放り出した労働者側が無責任とはならず、道義的にも企業が悪いとなる。

第三者が間に入って退職を代行してくれることは、悪質な企業に対する牽制になり、「心理的な安心感」と「道義的な正当性」を得られることが、「退職代行」を使うメリットといえる。

 

退職代行のデメリットは「有料」であること

退職代行のデメリットは、シンプルにお金がかかることだ。

退職届と封筒があれば退職はできるので、本来なら300円以内でできることに、3万円も支払わなければならないのは、明確なデメリットと言えるだろう。

また、退職代行は、企業と「交渉」することまではできない。(「交渉」ができるのは弁護士だけ。)

例えば、「残業代を支払ってください」と企業に言うことはできるが、それを企業が無視したときに、「残業代を支払う交渉」まではしてくれない。

ちなみに、残業代を渋る企業に対して「交渉」する場合、弁護士費用が30万円以上かかる場合があるので、値段相応と言うべきだろう。

もし、その会社に長く勤めていて、未払いの給与や残業代が多い場合は、弁護士を雇ったほうが、未払い分を回収して収支がプラスになる可能性がある。また、「失業保険」を受ける場合は、会社との交渉で「会社都合退職」にしてもらうという落とし所がある。

「退職代行」を使うと、自分から辞表を出したのと同じ「自己都合退職」になることに注意しよう。

「自己都合退職」か「会社都合退職」かは、失業保険を受ける際にはけっこう重要なので、詳しくは別記事の「会社を辞めるとき「会社都合退職」を狙うべきか、「自己都合退職」でいいのか?」で解説している。

残業代や会社都合退職を期待できないというのがデメリットだが、「転職先はすでに決まっている」「さっさと辞めてなるべく早く次の仕事を探したい」のであれば、3万払って「転職代行」してもらうのはアリだろう。

 

退職代行は使う必要がないのか?

結論から言うと、使う必要はない。

退職代行を使わなくても、一方的に「辞表」を送りつけて、その後の電話などを全部無視すれば「辞める」ことができる。

では、退職代行はお金がかかるだけで使うメリットがないのかと言えば、そうではない。

「退職代行」という営利企業の仲介を通すことで、コンプライアンスを無視した企業の追求を牽制できるし、「企業の圧力のせいで言い出せなかったが、金を払ってまで仕事を辞めたかった」という道義的な正当性を得ることができる。

正当性で言えば、辞めさせないように圧力をかける企業や、辞めたあとに電話をかけ続ける企業側が悪いし、労働者がわざわざ金を払うのはおかしい。

しかし、意気地になって企業側と正当性を争ったりしても何も得るものがないので、さくっと辞めて、「次」を考えるために全力を尽くすのは、合理的な判断と言える。

「退職代行に金払うとかバカじゃん」と言う人もいるかもしれないが、そんなことよりも、自分のメンタルを守り、次に繋がる活動にリソースを注ぐほうがずっと大事だ。

もし「退職代行」が10万円以上もするようなサービスならば、「こんなことに金を払うのはおかしいよ」となるかもしれない。しかし、現在の退職代行は3万円で使うことができ、人件費やサイト維持費や、弁護士事務所がスポンサーについていることなどを考えると、適性な価格であると言えるだろう。(退職代行業は新規参入が容易なので、ちゃんと価格競争が起こっている。)

退職代行は、「退職代行側とやり取りしさえすれば、あとはもう一切企業と連絡をとらなくていいし、即日で辞められる」というのが強みだ。

うじうじ悩んだり、怖がって企業に行き続けてしまうなら、退職代行に3万円支払ってメンタルを守り、「次にどうするか?」に集中したほうがいいだろう。

 

退職代行はどこを使えばいいか?

「退職代行はどこを使えばいいか」だが、どこもやることはほとんどかわらないのだが、強いていえば、弁護士か労働組合がスポンサーについていて、料金が3万円で収まるところ、がおすすめだ。

まず、「弁護士が直接」とか「残業代を請求」みたいなオプションがついていて、そのぶん料金が高くなっているサービスがあるが、退職代行は「交渉」まではできないので、無駄な出費になる場合が多い。弁護士を使った残業代の請求になると、追加料金をせびられるリスクがあるので、5万円以上もするような変に料金が高いところはやめたほうがいい。

また、「転職サポート」みたいなオプションがついているところも避けたほうがいい。(そもそも転職系のサイトなどは無料で使えるものが大半だし、転職は転職で別に行ったほうがいい。)

「退職代行」はあくまで、「すぐに、安心して辞めるためのもの」と割り切って使うべきだろう。変なオプションや追加要素があって、そのぶん料金が高いところは、むしろ警戒するべきだ。

一方、弁護士や労働組合がスポンサーについているわけではない普通の法人で、料金が1万円台とかのものも、やめておいたほうがいい。適当な辞表を代わりに送るだけで、料金振込み後には連絡がつかなくなったり、追加料金を請求してきたりなど、心理的な負担を減らすために退職代行を使うのに、退職代行のせいで余計な心労を抱えては本末転倒だ。

そのため、「退職代行には3万円かかる」と考えたほうがいいだろう。

コンプライアンスに欠けた企業を牽制して、労働者が安心して退職できるようにするためには、「弁護士事務所」か「労働組合」がバックについていて、何かあったときのトラブル対応能力があるところが望ましい。

具体的に紹介するなら、弁護士がスポンサーについている「NEXT」か、労働組合がついている「ガーディアン」は、どちらも料金が3万円で、説明した条件を満たしている。

 

以上、「退職代行は使う必要がない?メリットとデメリットを解説」を解説してきた。

当サイトでは、「労働法」や「ブラック企業」などについて解説した記事を書いているので、よければ参考にしてほしい。

 

また、転職関連の記事も書いているので、転職先を探している人は以下も参考にしていってほしい。

 

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