「少子化問題を解決するためには何をすればいいのか?」を解説する。
「少子化の原因」については、「なぜ少子化が起こっているのか?本質的な原因をわかりやすく解説」ですでに詳しく述べた。

今回は、「具体的な解決策」について述べる。
また、「少子化の抑制は先進国の重要課題であるはずなのに、なぜそれがなかなか政策に移されないのか?」についても解説する。
目次
少子化対策の難しさは「出生率の高い国を見習えばいい」わけではないこと
少子化対策が難しいのは、「うまくいっている国(出生率の高い国)」を参考にすればいいわけではないことだ。
出生率は、「教育水準の低下」や「格差の拡大」など、社会にとって良いとは言えない要因で上昇することがある。
日本も、戦時中や戦後すぐの時期は、出生率が非常に高かった。
「なぜ少子化が起こっているのか?本質的な原因をわかりやすく解説」で述べたが、そもそも、少子化は、先進国が達成した「善いこと」の反面として起こっている問題なのだ。
国民の教育水準を落としたり、現代的な倫理観を放棄するなど、時代に逆行すれば、おそらく少子化問題は解決するだろうが、それでは意味がない。
出生率の高い途上国の政策を見習うわけにはいかないのはもちろんのこと、出生率が高い傾向にある先進国においても、
- 教育水準の低い移民を入れる
- 格差を広げて教育水準の低い階層を生み出す
など、「教育水準や、生活水準の低い人たち」を国内に作り出せば、出生率は上がる。
フランスのように移民が多い国や、アメリカのように格差が激しい国は、「社会が多くの問題を抱えているからこそ出生率が高い」可能性がある。
「出生率の高い先進国」を見習うにしても、「少子化対策がうまく行っているから出生率が高い」のか「社会が問題を抱えているから出生率が高い」のか、判断が難しいのが少子化問題の特徴だ。
参考にするならば、フランスの少子化対策
上で述べたように、少子化対策は、他国を見習おうとしても、本当にそれが良い政策なのかの判断が難しい。
それでも、意識的に少子化対策を打ち出し、近年では1.8〜2.0と、先進国の中では特に高い出生率を維持し続けているフランスは、参考にしてもいい国だと思われる。
フランスの少子化対策を参考にしようとする上で、不安要素がないわけではない。
「積極的な移民政策」と「積極的な家族手当」の組み合わせは、国内の大きな混乱や対立の原因にもなっている。
2017年には、国民戦線のマリーヌ・ル・ペン(けっこうな右派)が大統領選の決選投票に残り、エマニュエル・マクロンと争った。結局はマクロンが選ばれたが、下手すれば極右がフランスの大統領になり得る事態だった。
また、2015年に出されたミシェル・ウエルベックの『服従』という小説では、フランスという国がイスラム教に乗っ取られ、フランス人の大学教授がイスラム教に改宗するまでを描いている。
ウエルベックの小説はもちろんフィクションだが、現実のフランスでも、デモ活動の過激化や、銃撃戦によって警察に死傷者が出たりなど、穏やかではない事実は多くある。
フランスの情報を日本に発信したがる人は、フランスの素晴らしい部分を説くことが多いが、フランスにはフランスの問題がたくさんある。
また、「フランスの出生率の高さは、いったいどれくらい、移民によって支えられているのか?」についてだが、これは当のフランス人からしても、わかりにくいものだそうだ。
というのも、国籍を取得すれば統計上は「フランス人」になる。少子化対策の文脈では、「親の人種、出身、宗教、教育水準」などは重要な要素だが、そのような統計をとること自体が差別(政治的に正しくない)と見なされ、データとして明らかになりにくい。
そういう意味でも、フランスは厄介な問題を多く抱えている。
しかし、仮に移民の比率を多く見積もったとしても、フランスは、先進国の中では少子化対策に成功している国だ。
そして、「伝統への回帰」に頼らず、一定の理念と合理性に基づいて成果を出しているという点において、参考にすべきところがある。
フランスの少子化対策は
- 家族手当(日本で言う児童手当)
- 子供を多く産んだ家庭ほど減税する
- 父親の産休
- 事実婚と婚外子を認める
- 教育費の無償化
などが主に挙げられる。
日本でも、フランスと似たような手当てはある。ただ、フランスの場合、「子供をたくさん産むほど優遇される」というのが日本よりずっと顕著で、政府がそのような政策を積極的に打ち出せるくらい、少子化対策に対する国民の理解があるのだ。
また、現在のフランスは、子供を作った男女の約半数が、事実婚と婚外子だ。伝統的な家族制度に回帰しない形での出産・育児支援によって成果を出しているのが、フランスの特筆すべき特徴となる。
「市場」では解決できない問題なので、「国」が金を出せという話
「なぜ少子化が起こっているのか?本質的な原因をわかりやすく解説」で述べたが、少子化の原因は、「伝統」の影響力が衰え、「市場」の影響力が増えたことだ。
「市場」には、「出生(人口の再生産)」を評価することができないという根本的な欠陥がある。
- 伝統……出生が評価される
- 市場……出生が評価されない
かつての出生率が高かった時代は、「伝統」の影響力のほうが強かった。
今は、「伝統(出生が評価される)」が弱まり、「市場(出生が評価されない)」が強くなりすぎたせいで、多くの人が子供を産み育てられなくなっている。
出産・育児は、単純に時間と労力がかかるので、「市場」で活動する上ではマイナスにしかならない。
「市場」は「出生」を評価できないが、社会を維持し続けるためには「出生」は必須だ。であるならば、国家が「出生」を積極的に評価して支援すべきというのは、問題に対する解決策としては妥当なものだろう。
出生に配慮すること(育休を徹底すること)は企業の社会的責任
少子化対策のためには、国民がその重要性を理解して、そこにコストを導入することに同意しなければならない。
そしてそれは、「企業活動」にも同じことが言える。
「市場」では「出生」が評価されない……すなわち、「市場」で活動する「企業(経営側)」は、なるべく従業員に「出生」に関わってほしくないとなりがちなのだ。
「企業」からすると、従業員が育児休暇をとったり、育児関連のトラブルで仕事を休んだりするのは損失なので、できるならばそういうリスクのない人を雇いたい。
企業活動にとって「出生」は単に余計なもので、それは「市場」で活動する以上は当然のことではあるのだが、それが続くと長期的には社会が衰退してしまう。
そのため、「出産や育児によって不利な扱いをしない」というのを、企業が最低限守らなければならないルールにするのだ。
日本では、産休や育休が、「女性への配慮」という点のみで捉えられていることが多いが、これはまったく見当違いで、育休は、「男性にも取得を強制しなければならない制度」なのだ。
産休・育休のコンセプトは、「企業が好き勝手にやると、労働者は子供を産めなくなってしまうので、企業は子供を産んだ人が不利にならないようルールを守らなければならない」という話であり、女性のみならず、「男性の育休取得を強制する」くらいでなければ意味がない。
このような企業の社会的責任については、日本ではほとんど理解されていない。
本来であればシンプルな話なのだけど、国民の合意が難しい
先進国における少子化対策は、
POINT
- 「市場」は「出生」を評価できないので、「市場」の影響力が増え続けると、少子化が進む
- 社会を維持するために「出生」は必要であり、「市場」で解決できないのだから、「政府」が積極的に支援しなければならない
- 「市場」で活動する「企業」にも社会的責任は求められ、子供を作った者が不利にならないよう、「育休・産休」などのルールを守らなければならない
という話なのだ。
本来ならば、少子化対策は、「人口の維持は社会の存続のために必要だから、国民はその重要性を理解して、次世代のために金とコストを支払え」という、シンプルなものであるはずだ。
しかし現状、少子化対策について、国民の同意がとれているわけではない。
なぜ、本来ならば単純な話である「少子化対策」について、国民の政治的な合意が難しいのかを、これから説明してく。
実は、少子化対策は、「伝統」や「福祉」とミスマッチなところがあり、右派からも左派からも批判されやすい。
「少子化対策」は「伝統(右派)」から批判される
本来であればシンプルな話である「少子化対策」を、難しいものにしているのは、「伝統」が衰退した結果として「少子化」になったという経緯だ。
実は、国による育児支援などの積極的な少子化対策は、「伝統(右派)」の側から批判が起こりやすい。
例えば、「子供は家が育てるべき」という伝統を重視する人は、「将来性もなく子供を作った親に国が支援するのはけしからん」と考える。
国がそんなことをしなくても、「伝統」を評価する社会に戻せば、出生率は再び上昇する、と保守派は考えるのだ。
実際のところ、「伝統(保守)」的な価値観が元通りになれば、出生率は上がる可能性が高いだろう。ただ問題は「それが現実的に可能なのか?」ということだ。
これほどまでに市場経済が浸透してしまったあとで、保守的な家族観に再び回帰するというのは、かなり非現実的だ。
高等教育を受けた女性は「従順な妻」になりたくないと考えるし、市場が成熟してお金を稼ぐ難易度が上がっているので、「頼れる夫」を十分にこなすことができる男性は少なくなっている。
「昔には戻れない」ことを認めた上で、それでも社会を維持するために、政府(国民全員)による積極的な育児支援を打ち出していかなければならない、というのが、先進国における少子化対策のセオリーだろう。
「事実婚と婚外子」の多いフランスの少子化対策は、伝統が解体されたことを前提として、積極的に出生に支援をしようとする点に、見習うべきところがある。
ただ、難しいのは、フランスが明確に成功しているとも言い切れないことだ。フランスの出生率は、1.8〜2.0を推移していて、先進国の中では十分に高いが、結局のところ2.08に届いていないし、移民が多いことを考慮にいれると、実質的な数値はもう少し低いだろう。
また、上でも述べたが、フランスはフランスで多くの社会問題を抱えている。
お手本にすべきフランスが、文句なしに成功しているとも言い切れないことが、問題を複雑にしている。
特に日本のような国では、少子高齢化社会だからこそ、政治的な決定権を持っているのは高齢者が多く、「国家による積極的な育児支援」よりも「伝統を重視するべき」という考え方が支持されやすい。
「少子化対策」は「福祉(左派)」から批判される
実は、国家による積極的な育児支援は、「福祉」とも衝突しやすい。「不公平だ!」という声が挙がりやすいのだ。
すでに現状の社会は、「弱者ほど結婚できず子供を作れない」ものになってしまっている。
その上で、「子供のいる家庭を優遇」するとなれば、「なぜ弱者ではなく強者を支援するのか!」という批判がされやすい。
現代において、「結婚して子供を作れる」時点で強者側であり、それゆえに育児支援は、「弱者を支援するべき」という「福祉」のコンセプトと衝突するのだ。
様々な事情で子供を産めなかった人・産まない選択をした人がいて、その人たちからすれば、子供のいる家庭のために自分たちの税金が高くなるのは、我慢ならないことかもしれない。
長期的な国家のためを考えるなら、子供のいる家庭のために税金を多く使うべきなのだが、それをしようとすると多くの反対が挙がり、民主主義国家においては政治家は有権者に逆らうことができない。
短期的な公平感を重視するあまり、長期的な国のためになる支援を打ち出しにくいという問題がある。
まとめ
POINT
- 日本も昔は出生率が高かったように、少子化対策は、出生率の高い国を参考にすればいいわけではないので難しい
- フランスは、問題がないわけではないが、「伝統への回帰」とは違い、「国家による積極的な少子化対策」によって高い出生率を達成しているので、参考にするべきモデルと言える。
- 「伝統」が弱まり「市場」の影響力が強くなったが、「市場」では「出生」が評価されない。そのため、国家が積極的に「出生」を評価し、支援していく必要がある。
- 国家による積極的な「出生」への支援は、「伝統」と衝突する。かつては「伝統」の影響力によって出生率が高かっただけに、問題が複雑になっている。
- 現状ですでに、結婚して子供を作れること自体が「強者」側であることが多い。そのために、育児支援は、「弱者よりも強者を優遇している」と、「福祉」の側からの批判が起こるという問題がある。
結局のところ、どれだけ優秀な人もいずれは老いるし、下の世代に頼って生きていかざるを得なくなる。
長期的に公平な社会を維持していくことを考えるなら、出生率を2.08に近づけることは、国家として最も重視すべき目標と言っても過言ではない。
そのために国がやることは、「出生を積極的に評価して、そのために金を出す。企業にはルールを守らせる。」に尽きる。しかし、国民や企業の合意を得るのが難しいのが現状だ。
結局のところ、国民は税金を払いたくないし、企業は余計な負担を避けたい。
しかし、世代間の比率が偏りすぎないように努力することは、国民の責任でもある。
現時点ですでに、これから深刻な少子高齢化が進んでいくことは避けられないが、その程度を少しでもマシにしようとする努力は必要だ。
政府が少子化対策!と言ってるのは人口が減って地価が下がるから。
既得権益を維持するために言ってるだけです。
労働力不足にはならない、他国を見ても人口は日本よりもっと少ないです。
ロシアはあの広大な土地面積で人口は日本より数千万多いだけです。
英仏は日本より人口が少ないです。労働力不足なんて嘘です。
まあ、政府の言ってる労働力とは奴隷なみに低賃金で働かせるための労働者の事でしょう。